「王様文庫」とは巧いネーミングだと思うが,「知的生きかた文庫」のシリーズを出していた三笠書房から2000年1月に創刊された新顔文庫。「知的生きかた文庫」では取り上げてこなかったエンターテイメント性の高い企画,「遊び」の感覚を大事にした企画を中心にラインアップを組んだとのことで,現在のカテゴリーは,カルチャー&情報、ライフスタイル,エンターテイメント,文芸・エッセイ,男と女の5つ。同じく最近出た宝島社の文庫と路線を同じくするように見えるが,それほどマニアックでも露悪趣味でもなく,いまのところ,執筆者,内容とも王様らしからぬごく平凡なものばかりなのが残念。
三笠書房はそもそも,海外文学の翻訳出版社として設立され,「風と共に去りぬ」本邦初訳を出版したことで知られる。その後,「ヘミングウェイ全集」を出した頃まではまだ海外文学のイメージが強かったが,渡部昇一や木村治美,竹村健一などの訳によるビジネスマン,キャリアウーマン向け流行書中心に変わってからは,私には縁のない出版社となった。もっとも,「知的生きかた文庫」は既刊点数が1000点を超えたということなので,その方面の需要は多いのだろう。