1998年03月24日

ハヤカワ文庫

長いお別れハヤカワ文庫は,1970年(昭和45),「さすらいのスターウルフ」(エドモンド・ハミルトン),
「征服王コナン」(R.E.ハワード)などのSFを皮切りにスタートした。


ハヤカワ文庫は,SF(サイエンスフィクション),FT(ファンタジー),JA(日本作家),NV(海外現代小説),NF
(海外ノンフィクション),Jr(海外ジュニア小説)などからなる文庫で,ミステリは含まれていないのだ。ハヤカワ・ミステリ文庫は,
全く違う種類のものなのである。では,モダンホラー文庫というのはなんだい?と考える人もいるかもしれないが,あれはNVの中の
「モダンホラー・セレクション」という分類なのである。


これに,ミステリアス・プレス文庫という海外の出版社と提携した文庫も加え,早川書房からは3種類の文庫が刊行されていることになる。


ハヤカワ文庫の各シリーズの特徴は以下の通り。


ハヤカワ文庫SF


1970年〜。すでに1000冊を越えた。 当初は日本人作品もハヤカワ文庫SFで出版されていた。ただし今はすべて絶版。品切れ,
絶版が少ない文庫といわれていたが, 最近は絶版になるのが早く、900番台でもすでに目録から消えている作品もある。 現在月4、
5冊ペース。


ハヤカワ文庫JA


1973年〜。400冊を越えた。 現在月1、2冊ペース。


ハヤカワ文庫FT


1979年〜。もうすぐ250冊。 現在月1冊(上下分冊の時は2冊)ペース。


ハヤカワ文庫HB


1991年〜92年。HBとはHi!Booksのこと。 全18冊。Jr、YR、GBと同様に短命であった。


複雑に絡み合うハヤカワ・シリーズ


早川書房には,文庫のほかにいくつかのシリーズがある。まず昭和28年以来続くあの膨大なハヤカワ・
ミステリ
。そのSF版ともいうべきハヤカワ・SFシリーズ。単行本のハヤカワ・ノヴェルズ,ハヤカワ・ノンフィクション。
さらには日本SFシリーズとか黒人文学全集とか,古くはハヤカワ・ライブラリなどなど。これらが文庫と複雑に絡み合っているのである。


たとえば,ハヤカワ文庫SFで刊行されている「火星の砂」,「脳波」,「虎よ,虎よ!」
といった作品はハヤカワSFシリーズを文庫化したものだし,ハヤカワミステリ文庫の「そして誰もいなくなった」,「ガラスの村」
ほか多くの作品はハヤカワミステリからの天下りである。では,ハヤカワSFシリーズ->文庫SF,
ハヤカワミステリ->ミステリ文庫という図式が常に成り立つかといえば,そうとも限らない。SFシリーズのドル箱人気作だった
「太陽の黄金の林檎」,「刺青の男」,「火星年代記」はハヤカワ文庫NVに収録されている。同様の例はポケミスにもあって,「航空救難隊」,
「サイコ」などは,ミステリ文庫ではなく,やはり文庫NVに入っている。


シリーズ刊行ものからの天下りでなく,文庫で初めて訳出された作品も相当な数に上る。しかし,
どういう作家のどういう小説が文庫オリジナルで登場するかについては,一定のパターンはない。


有名な「87分署」シリーズ。これは昔からハヤカワミステリで刊行されてきたものである。ところがある時,「われらがボス」
という新作がポコッとミステリ文庫で出た。以後は文庫で出続けるのかと思ったが,意外にもまたポケミスに復帰した。ディック・
フランシスの競馬スリラーはもっとややこしく,初期の「興奮」,「大穴」,「本命」などはハヤカワミステリ,「重賞」
がミステリ文庫オリジナル,後期の「反射」,「利腕」などはハードカバーのノヴェルズで刊行,という具合。


まあ,大体のところをいえば,海外で非常に話題を呼んだ作品(ジョン・ル・カレやレイ・デイトンのスパイ小説,カート・
ヴォネガットの新作などがその例)や,通好みで渋いミステリ(S・F・X・ディーンやS.T.ヘイモン)などは普通は文庫で訳出されない。シリーズものか,ちょっと軽いタッチの作品が文庫オリジナルになる,と思えばいいだろう。


ハヤカワ文庫FTについては,Alisato's
Room
に全点リストと詳しい解説があります。

posted by 南野靖一郎 at 10:16| コレクション