1997年09月08日

外国文学の復権

最近,外国文学が読まれないという。ミステリやSFなどは別として,いわゆるかつて「世界文学全集」
に収録されていたようなスタンダードな名作がダメだという。そういうものばかり並んでいる岩波は「危機感」を感じているかもしれないが,
名作が読まれないというのは,別に岩波の責任ではないし,今に始まったことでもない....。


今回(97年10月14日),岩波文庫よりシリーズとして販売される「わが心の世界文学」40点は,もっぱら「名作」
をラインナップしてはいるものの,なかには他の文庫では読めない面白いものが2点ある。久々の復刊だし,買っておこう!


トリストラム・シャンディ


プルーストやジョイスらの「意識の流れ」派の先駆的作品といわれている。プルーストを読んでめげた人でも,
時の流れがゆったりした遙か昔の物語だから多少は安心。このユーモアは現代人には笑えないが....。変わった小説が好きで,
これといったストーリーなしに1000ページ読み切れる自信のある人にはお勧め。


聖アントワヌの誘惑


フローベールがブリューゲルの名画を見て書くことを思い立ったというオカルト・ナンセンス・ハチャハチャ小説。
砂漠の真ん中で修行を続ける聖アントワヌの前に,地獄の帝王サタンをはじめ,シバの女王,魔術師シモン,仏陀,キリスト,ヘラクレス,
アポロ,バッカス,ポセイドン,一角獣,スフィンクス,その他大勢が続々と登場して戦う妖怪大戦争。


また,この企画に連動して,10月新刊として次の5点が発売される。


世界文学のすすめ(大岡 信ほか)読書のすすめ(岩波文庫編集部)読書案内(モーム)世界の十大小説(モーム)書物(森 銑三,
柴田宵曲)


またモームか....という感じはするが,このモーム2冊のように岩波新書から文庫へ成り上がったケースは少ない。
電車読書には役立ちそうだ。


ついでにそのパンフレットの中で,新渡戸稲造「武士道」や内村鑑三「代表的日本人」がブームである(「私の好きな岩波文庫101」
フェアが貢献したらしい)といっているが,これは本当^^? 私は全然知らなかった....。

posted by 南野靖一郎 at 16:07| 1997年

1997年09月06日

中島 敦の南洋物

山月記・李陵 他九篇 (岩波文庫)
中島 敦
岩波書店
売り上げランキング: 107752

岩波文庫より出た中島 敦の「李陵・山月記」は,以前から持っているような気がしたので,改版ものかと思い手に入れるのが遅くなってしまいました。
この作品集の中で初めて読み面白いと思ったのは,南洋物である小品集「環礁」です。中島の作品に南洋物があるのは,昭和16年より南洋庁の国語編修書記となり,パラオ島にいった経験があるためで,
作品の舞台も日本統治下のミクロネシアが中心となっています。
十数年間子供が生まれなかった島で,神のように育てられているただ一人の女の子と老人ばかりとなった島の悲しい姿(寂しい島)。内地の男が好きな現地の女性とのすれ違い(夾竹桃の家の女)。ナポレオンと呼ばれる不思議な悪童(ナポレオン)などなど。小説というより,印象記といった風ですが,南方の暑い風とは裏腹に,中島の筆は淡々としていて,寂しくひんやりとした心持ちがします。その気分は,当時の日本人と現地人とのクールなかかわりかたによるのかもしれません。
☆文庫本で読める中島 敦 (1997.9)☆
「山月記・李陵 他九篇」 岩波書店
「李陵」 社会思想社
「山月記・李陵」 集英社
「中島敦全集」 筑摩書房
「李陵・山月記」 新潮社
「李陵・山月記・弟子・名人伝」 角川書店
posted by 南野靖一郎 at 16:00| 1997年

1997年06月24日

開館のご挨拶

学生時代,オレンジ帯の岩波文庫50周年記念復刊セットをたまたま購入したことで,古い文庫本にはおもしろいものがあるなぁと感じ,文庫本を集めるようになりました。その頃にはまだ,新刊書店でも現在の著者番号ではなく,★番号のついた岩波文庫がならんでいて,今では絶版(正しくは品切れか)になっている本を,いろいろ手に入れることができました。

しかしながら,近所の古書店では,手に入る絶版文庫が少なかったこともあって,当時絶版岩波文庫の販売で有名だった神田の山陽堂書店に注文を出すようになり,ラマルク「動物哲学」やゲーテ「色彩論」,ラスキンやスティブンソンなど,おもしろそうな本を取り寄せては読んでいました。

岩波文庫は現在,毎月の「重版開始」と,年2回の「復刊」で品切れ書目を復刊しています。これらの復刊で買わなければならない書目が無くなってきたことは嬉しいことであるとともに,ちょっと寂しい気持ちもします(古書店で買ったボロボロのものを持っているので,綺麗なものに買い換える,という場合は結構あります。これなど大いなる無駄ではありますね)。今後も面白い文庫本,ユニークな文庫本を探していきたいと思います。
posted by 南野靖一郎 at 19:30| 1997年

開館のご挨拶

学生時代,オレンジ帯の岩波文庫50周年記念復刊セットをたまたま購入したことで,古い文庫本にはおもしろいものがあるなぁと感じ,文庫本を集めるようになりました。その頃にはまだ,新刊書店でも現在の著者番号ではなく,★番号のついた岩波文庫がならんでいて,今では絶版(正しくは品切れか)になっている本を,いろいろ手に入れることができました。

しかしながら,近所の古書店では,手に入る絶版文庫が少なかったこともあって,当時絶版岩波文庫の販売で有名だった神田の山陽堂書店に注文を出すようになり,ラマルク「動物哲学」やゲーテ「色彩論」,ラスキンやスティブンソンなど,おもしろそうな本を取り寄せては読んでいました。

岩波文庫は現在,毎月の「重版開始」と,年2回の「復刊」で品切れ書目を復刊しています。これらの復刊で買わなければならない書目が無くなってきたことは嬉しいことであるとともに,ちょっと寂しい気持ちもします(古書店で買ったボロボロのものを持っているので,綺麗なものに買い換える,という場合は結構あります。これなど大いなる無駄ではありますね)。今後も面白い文庫本,ユニークな文庫本を探していきたいと思います。
posted by 南野靖一郎 at 19:30| 1997年

1997年06月09日

コレットの描く戦後のパリ

シェリ (岩波文庫)
シェリ (岩波文庫)
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コレット
岩波書店
売り上げランキング: 25151

第一次大戦後の動乱の中にあるパリが,悲恋ものの舞台として格好の場であることは疑いないけれど,その裏社交界を描くコレットの
「シェリ」と「シェリの最後」が,最近岩波文庫より続けて出ました。



年老いた高級娼婦とその若き美貌の愛人シェリとの愛欲の日々は,「青い麦」の作者たるコレットの自伝的要素が強いといわれていますが,若く従順な妻を愛することもできず,激しい時代の変動に取り残され,退廃と孤独の内に沈んでゆくシェリの姿は,悲しくも魅力的です。

先年,パリのペール・ラシューズ墓地を訪れた際,入り口からすぐのところにあるコレットの墓は,色とりどりの花束が捧げられていて,
すぐにそれとわかりました。

☆文庫で読めるコレット (1997/9)☆
シェリ(岩波文庫),青い麦(集英社),青い麦(新潮社)
(その後,残念ながら「シェリの最後」(岩波文庫)は絶版となってしまいました)
posted by 南野靖一郎 at 16:09| 1997年