久生十蘭短篇集

久生十蘭短篇選 (岩波文庫)岩波文庫「久生十蘭短篇集」を読む。
久生十蘭といえば,現代教養文庫の5巻本を思い出す人も多いだろう。私も,いまは無きこの教養文庫のシリーズで,十蘭をはじめ,小栗虫太郎,香山 滋,橘 外男,夢野久作,日影丈吉,山田風太郎に親しんだので,今回は久しぶりの再読となった。(十蘭の文庫本は,創元推理文庫,中公文庫,講談社文庫,ちくま文庫,朝日文芸文庫など多数出ていたが,現在は本書と講談社文芸文庫の作品集以外は絶版のようだ)
定本久生十蘭全集 1どうも怪奇小説,幻想小説のイメージが強い教養文庫のせいもあって,十蘭もロマンティックな作風と思っている向きもあろうが,実際に作品を読んでみると,非常にシャープで論理的な印象を受ける。十蘭は戦前,パリで工学と演劇を学んだそうで,欧羅巴を背景にした作品も多い。
ちなみに,国書刊行会の「定本久生十蘭全集」が生前最後に公表された本文に拠っているのに対して,本文庫は,初出紙誌をもとにしている。編者によると,十蘭はしばしば改稿をしており,初出とその後の版に異同があることが多く,今回はあえて定本と異なる版を採用したとのこと。読み比べてみると面白いとは思うが,1冊1万円の定本は,ちょっと手が出ないね。

コメント

  1. 現代教養文庫、ああなるのだったら、もっとあれもこれも買っておくのだった、と悔やむ時があります。

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