門谷建蔵著「岩波文庫の赤帯を読む」は,とてもユニークな本だ。著者自身「赤帯限定読書マラソンのような」というように,岩波文庫の「赤帯」(外国文学)を900冊ほど読み,各々に短いコメントを付けたもの。
普通の書評本と違い,購入書店や価格の記録(多くは一般の古本屋で購入)を詳しく記す一方,コメントの方はかなり自由自在^^;;。ベスト20や30がいろいろ出てきて,結局なにがお薦めなのか,途中からわからなくなってしまう。赤帯すべてを精読するというのはもとより無理な話であるが,途中で投げ出した本については,正直にそのように書いてある。岩波文庫を多少でも集めた経験のある人には,思い当たる節も多いだろう。
また,同時進行的に書いているため,最初読みたくないといっていた「総目録」を,いざ手に入れると「もっと早く買っておけばよかった」などど後悔しているのも面白い。著者は,細々とした食べ物や風習・伝説を描写した作品が好きなようで,「嵐が丘」や「高慢と偏見」,カフカ,
ツルゲーネフなどは嫌いなようだ。それではパール・バックの「大地」ならどうか,というと「中国の大家族はつまらない」そうである。そんな訳で,この本の中では,あちこちに出てくる「嫌いな本」というのが,いちばん楽しく読めた。
著者によると「総目録」記載の著者番号は,現物と違っているものがかなりあるそうだ。それは今後の刊行を睨んだ変更でもあるらしいが,私は最近,著者番号別のリストをつくるのをやめてしまったので,参考になった。