第三身分とは何か(シィエス)

第三身分とは何か (岩波文庫)
シィエス
岩波書店
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岩波文庫「第三身分とは何か」(シィエス著、稲本洋之助ほか訳)。

本書はフランス革命関わる書の中で最も有名なものの一つ。我が国でも明治期に早くも中江兆民らによって本書の思想が紹介されるなど、古くから親しまれてきた。岩波文庫でも1950年に「第三階級とは何か」(大岩誠訳)として刊行されているので、こちらで読んだ方も多いだろう。それで、シィエスよりシエイエスのほうが馴染みがある。

私も学生時代に旧訳で読んだが、今回の新訳本はとても読みやすく、教科書で書名だけは聞いたことがあるがどんな本だろう、というライトな興味で取り付いた人でも読みきることができると思う。詳しい訳注と解説も付けられているが、そもそもフランス革命当時に数万部も流布した、邦訳で150ページほどの啓蒙書であるから、もとから簡潔でインパクトの強い文章なのだ。歴史を動かしたシィエスだが、雄弁家というより理論家であり、風貌も過激派という感じではないね。

第一身分(聖職者)、第二身分(貴族)に対して、それ以外の平民を第三身分と呼ぶが、シィエス自身は、平民出身ながら神学校で学び、行政官としての聖職者となり、州議会にも聖職者代表として参加するなど、それなりに行政の中心にいた。シィエスは、そのような境遇にいたからこそ、平民としての限界や不当な身分特権に憤りを強く感じ、本書を始めとする第三身分を擁護する急進的な啓蒙書をいくつも著し、その結果、聖職経験者でありながら、パリ第三身分の代議員に選出されている。

参考リンク
フランス革命とは
フランス革命大解剖