コロンブス 全航海の報告

コロンブス 全航海の報告 (岩波文庫)
岩波書店
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岩波文庫「コロンブス 全航海の報告」(林屋永吉訳)。コロンブスの4回にわたる航海について、コロンブス自身と同行者による主な書簡を選んでまとめたもの。

コロンブスは1回目の航海で新大陸を発見し、2回目で植民地化に着手、3回目は現地統治の乱れとコロンブスが王族に匹敵するような権力を持つことへの反発から捕縛され本国へ送還、最後の航海ではジャマイカ方面に向かうもののすでに王室からは見放され、コロンブスの求めた提督の世襲権も認められなかった。そのような事情で、本書でも初期の希望と誇りに満ちた書簡から、次第に自己保身のための愚痴っぽい書簡へとトーンが変わってくる。

かつての英雄コロンブスは、いまでは植民地における大量殺戮や虐殺の先駆者として、そのイメージは大きく変わってしまった。本書のタイトルに惹かれて海洋冒険譚として手に取る人がいるなら、失望することだろう。

ついでに、この訳者あとがきは誰得なのか私には理解できなかった。