文庫本の処分

本を買うのに勇気がいる人は,特殊な恥ずかしい本を集めている人か,初版本など高価な本を集めている人であろう。
買うのには勇気がいらないが,どんな本でも売るときには勇気がいる。まあ,本を売るとか売らないとかいう以前に,売れるような本を持っているのかいな?という問題があるのだが,たとえ二束三文,あるいは古本屋のオヤジに,ツブシ(タダですね)にしかなりませんねぇ,と言われるような本しか無くとも,かつて一度は関心をもち,手に入れた本だから,捨てたり売ったりするのには勇気がいる。
そもそも愛着のある本は捨てられないし,気の迷いで買った読みそうもない本は,読んでいないがゆえに捨てられない。家庭のゴミで出すと,こんな本しか読まぬのかと近所から笑われ,わざわざ駅のゴミ箱まで運ぶ姿はなんとも惨めなのですね。
私自身は,貧乏性ゆえ,ほとんど本を売ったことはないのだが,一度だけ,学生時代に下宿を引っ越した際,100冊以上の角川文庫を処分したことがある。別に角川に恨みがあったわけではなく,片岡義男や西村寿行があまりに書棚で幅を利かせていたからである。
もっとも,片岡義男が嫌いになったわけではないから,その後,かなり後悔して,また買い集めたりして,結局元に戻ってしまった。
文庫本をあげる
最近,私の利用している駅の広場で,しばしばチャリティーバザーをやっている。文庫本もそうとう出品されているのでのぞくのだが,岩波文庫はほとんど無いし,どうも欲しい本が見あたらない。ありきたりのベストセラーか,逆に,こんな文庫本があったのか,という意表をついた書目(HOW TOものか話のネタ本系ね)ばかりがならんでいる。
それで,毎日のように書店の文庫棚を眺めていても,結局関心のない書目は全然見ていないのだな,と気づく。本の趣味というのはユニークなもの なので,自分と同じような趣味を持っている人だからと,読み終わった本をあげても,喜ばれることなどほとんど期待できないのかも。