彼女の父親は医者で,まずまず裕福な家に生まれたが,生来病弱だった。飛び抜けて秀才だった兄とくらべて,絶望感を感じたこともあったが,優秀な成績で学校を終えた。子供の頃から虐げられている貧しい人々に関心を持ち,彼らの気持ちを理解しようと鉄工所や自動車工場で労働などしてみた。スペインの市民戦争にも義勇兵として参加したが,すぐに負傷して帰国。トロツキと親交があり,ロシア革命の行く末には悲観的だった。
イタリア旅行を機に,それまで遠ざけていたカソリックについて考えるようになり,市民運動から離れて内省的な生活にはいる。ユダヤ人である彼女は,パリ陥落の際にフランスを脱出し,アメリカを経てイギリスにわたった。そこで,自ら病床にありながら,戦禍にある人々のことを思い,1943年,34歳で絶食して餓死した。
さてこういう若い女性,すなわちシモーヌ・ヴェイユをどうとらえたらよいのだろうか。1960年あるいは70年であったら別だが,いまは2005年である。
岩波文庫の新刊「自由と社会的抑圧」は,若き日の彼女の思想がわかりやすくまとめられている。つねに真摯な人というのは,やはり立派なのだろうね。
コメント
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かなり前、無料簡単HPを借りていた頃、
定期的にお邪魔していたキューバ音楽と
文庫本の中毒中高年です。地の糧の
ジッド、アデン・アラビアのポール・ニザンに
並ぶ学生運動時代のヒロイン的存在の
シモーヌ・ヴェイユについての考察記事で
懐かしさの余り、久方ぶりにコメントを。
旺文社文庫の工場日記、講談社文庫の
重力と恩寵に続いての文庫化でしょうか。
少し今更の気もしますが、フェアネスという
見方からも、今こそ読んでみたいと思わせる
記事で、とてもよかったです。では。
シモーヌ・ヴェイユ
シモーヌ・ヴェイユ † [Simone Weil] フランス・パリ生まれ 1909/02/03-1943/08/24 シモーヌ・ヴェイユ 『重力と恩寵』 『自由と社会的抑圧』 はてな Wikipedia シモーヌ・ヴェイユのた