チェ・ゲバラの映画の影響もあるのか、キューバ・シガーが人気だという。日常的にプレミアムシガーをくゆらすためには、かなりの金銭的余裕が必要だが、ワインと同じでちょっと高級な嗜好品として、色々蘊蓄を語りたくなるものではある。もっとも、シガー人口はワインに比べて取るに足らない数だろうから、葉巻に関する本もワインに比べるべくもない。しかも少々古くさい輸入商のカタログに毛が生えたようなものばかりだ。
そんな中で、ユニークなジャケットに収められた「リアル・シガー・ガイド」(馳 星周)は、異色の存在。1万本を超えるという著者のシガーコレクションは、豊富な資金がなければ成り立たないもの。しかし、あくまで自分自身の楽しみだけのために試行錯誤を繰り返してきた著者の経験は、普通のシガーファンの共感をよぶと同時に、これからシガーに挑戦しようというビギナーには有用なガイドとなるだろう(月刊プレイボーイの連載をもとにまとめられたもの)。
本書は、美味しい葉巻の買い方から始まり、保管の仕方、箱買いのすすめなど、著者ならではのノウハウを開陳するほか、愛するキューバ葉巻の紹介や北方謙三との対談も収録している。
タバコに全然興味の無い人には薦めようがないが、大人の嗜みの一つとして葉巻もありかな、と考える人には、読みでのある楽しい本だ。