1950年代の半ば,東京創元社が海外の推理小説に手を染めようとした時,積極的に賛成してその路線を押し進めたのは,
当時編集顧問だった小林秀雄であるという。世界推理小説全集,現代推理小説全集,世界大ロマン全集,クライム・クラブ,エラリー・
クイーン作品集,ディクスン・カー作品集などを刊行した後,1959年(昭和34年)5月に創元推理文庫を創刊。いきなりその年に55冊,
翌年には66冊を刊行した。
これは専門文庫としては破格の冊数であるばかりか,岩波,新潮,角川のメジャー文庫と比較してもさして遜色ない数字だったので,
読書界を驚かせた。以来,今日までほとんど海外ミステリのみで通し,多くのファンを獲得してきた功績は高く評価されよう。