「岩波文庫の赤帯を読む」に続いて,同じ著者(門谷建蔵)による「黄帯と緑帯を読む」が出た。今回は,日本文学を中心に,前書で漏れた赤帯も少し拾いながら,類書をまとめつつ,コメントしているのだが,各々の作品の解説ばかりでなく,作家別・年代別に岩波文庫への収録点数をしらべ,各作家の岩波文庫への貢献度をランク付けするなど,一風変わった読書記録となっている。
著者は好きな作家として,正岡子規,谷崎潤一郎,萩原朔太郎などを挙げ,嫌いな作家として,徳富蘆花,有島武郎,武者小路実篤などを挙げる。その理由は,日本文学の伝統になじまず,花鳥諷詠的でなく,人事一点張りだから,だそうで,この辺,趣味の問題とはいえ,理解し難いところもある。
黄帯,緑帯にかかわらず,詩歌集は比較的詳しく取り上げられている。ここでもその評は,個人的な好き嫌い問題となっているので,これを書評本とみれば,首を捻る向きもあろうが,岩波文庫収集家の記録だとすれば,購入した古書店や価格もいちいち書かれているので,それなりに興味深いところもある。
著者はプロフィールによると1940年生まれで,年輩の人らしいのだが,比較的最近岩波文庫に目ざめて,集中して買いまくっている。また,著者は,栞がわりにアイドルの足の部分だけを切り取った写真を挟み込んでいるという。どうも今ひとつ得体の知れない人なのである….。