文庫本を買ったときに,書店でかけてくれるカバーには,いろいろユニークなものがあり,これを書皮と称してコレクションしている人もいます(書皮友好協会)。
凝ったデザインや,有名人の手になるものなど,数多あるカバーの中に,実は岩波文庫・新書専用のカバーもあります。といっても,岩波文庫・新書だけサイズが違うわけではありませんから,他の文庫・新書本にかけられないわけではないけれど….。
このカバーを使っているのは,岩波文庫のお膝元?,神田神保町の岩波ブックサービスセンター。デザインは梅原龍三郎で,表紙の左上に「岩波新書・岩波文庫」と書かれており,両端(折り返し部)には,湯川秀樹と井上 靖による,岩波文庫・新書へ寄せる言葉が載っています。
・岩波文庫は私の父と母だ。優しいもの,厳しいもの,烈しいもの,あらゆる生きる根源をそこから得ている(井上 靖)。
・忙しい現代に生きる私たちは,さまざまな問題にとりかこまれている。古くからの問題のいくつかはそのまま残っている上に,つぎからつぎへと新しい問題が重なってくる。それらの問題の認識に役立つ手ごろな書物,それが岩波新書の存在の意義の一つといえるであろう(湯川秀樹)。
このカバー,もう20年以上の長い間,ほとんど変わらずに使われてきました。唯一,変わったところといえば,かつて名乗っていた岩波ブックセンター・信山社の文字が消え,岩波ブックサービスセンターとなったことです。写真は信山社時代と,現在のカバーです。