澤木四方吉「美術の都」

大正初期にフランスやイタリアの美術探訪の旅に出た澤木四方吉の日記や書簡を集めた紀行文集.で,
イタリアの観光美術案内としても役立つ本です。(これを簡略化した昭和版が松永伍一「私のフィレンツェ」ですな)

『芸術創造力や文化にとって王者と貴族の存在がなければならず,民衆的傾向はこれを弱めるものである。
フランス革命は人道的功績を残したかもしれないが,群雄割拠の病的近代思想を産んだ。英国は王国にして王政がないところに弱点があり,
フランスは共和制でありながら王国の残影をとどめるところの希望がある。』….「第三の男」かな,これは^^;;。

文中しばしば引き合いに出されるブルクハルト「伊太利文芸復興期の文化」と森鴎外「即興詩人」(ともに岩波文庫)
も合わせて読むと一層楽しめるでしょう。ほかに著者が直接見聞きしたカンデンスキーについての小論も興味深いところです。