1999年3月

3月31日

今日で3月も終わり。ようやく天候も回復しつつあります。Linux Magazineの第一号が本日発売というので,近くの書店に行ってみたのですが,まだ置いてありませんでした。Netscapeの動きなど,Linux環境の方が軽快に感じるので,最近よく使っているのです。小さい息子のキーボード乱打攻撃!にも耐性があるし….^^;;。

 

3月30日

また冬に戻ってしまったような寒い日が続いていますね。服部四郎「日本語の系統」を読んでいますが,各論には興味の湧くところがあるものの,なにせ大部なのでなかなか先が進まず,厳しいです。正直なところ,言語学関係の諸本は,よく違いが分からないのですね^^;;。

 

3月29日

新刊「イソップ寓話集」を読みました。電車の中で読むのには手頃なのですが,のぞかれたら,ちょっと恥ずかしいかな^^。岩波文庫には旧版のほか,「伊曾保物語」もありますね。

ついでにイソップの勉強をしようかと思ったのですが,関係のサイトは意外と少なくて,国内ではイソップワールドが,簡単な歴史や,なぜ物語が日本風に翻案歪曲されたのか,などを考察しています。また海外ではAesop’s Fablesが,絵とReal Audio付きで楽しいところです。

 

3月28日

風邪ひきのため,きょうは家で留守番です。新刊「水滸伝(6)」を読み始めたのですが,止まらなくなりそうなので,適当なところで切り上げ,近くの書店へ。母校(高校)の春休み課題図書というのが置いてある。20数年前,私が入学したときもそうだったが,新入生は何冊かの課題図書を読み,入学早々,感想文を提出しなければならないという鉄の掟があるのだ。しかし,そのタイトルたるや….。もうすこし新しい本は選べないのだろうか(><)。まあ,同じ本を30年読ませて何万かの感想文を集めるというのも,壮大な試みか^^;;。

 

3月27日

窪田空穂「わが文学体験」に,明治時代の我が国におけるロシア文学事情がわかる一節があります。ツルゲーネフの「猟人日誌」を柳田国男が手に入れ,田山花袋がそれを借りて一読感嘆し,小諸で教師をしていた藤村に送り,藤村からはその感想文が送られてきたこと。そのころは外国文学といえば英文学で,ロシア文学では内田魯庵訳「罪と罰」,花袋訳トルストイ「コサック」などしかなく,なかでツルゲーネフは比較的よく読まれていたこと。それは,「扱われている世界は遠く離れているが,作中の人物は,話をすれば通じるような気のする人が多かった」という親しみがあったからだろう,としています。全体としては,国文学畑の話が多い自伝的エッセイですが,女子美の教師や編集長など多彩な経歴を持つ空穂が,90歳近くにして,これだけ生き生きと楽しげに細やかに書いていることに,ただただ感服しました。

 

3月26日

風邪気味で絶不調なり~,といいながらも,新刊「20世紀アメリカ短篇選(上)」を読んでいます。本書は我々にも親しい20世紀前半の作家(O・ヘンリー,フィッツジェラルド,ヘミングウェイ,フォークナー,スタインベックなど)の短編を1篇ずつ集めたもの。おもしろいのは,岩波文庫の翻訳中絶本で必ず名前のあがるパソスの連作「USA」の最後の作品「メアリー・フレンチ」が訳されていることで,これは戦前のアメリカ共産主義者の生活が描かれている興味深い作品です。

 

3月25日

名古屋の古書店,人人堂の主宰する「古本長屋」をときどき読んでいます。古書目録のほか,名古屋を中心とした古書店主たちのエッセイ,ボヤキなども載っていて,楽しめます。近藤さんの本にも出てきましたが,名古屋もなかなか良い古書店が多いようですね。私自身は,各地に出張にした折り,努めて古書店をのぞこうと思っているのですが,最近は時間に追われて実現できないのが残念です。

 

3月21~24日

昨夜遅くに広島から戻ってきました。近藤健児さんの「絶版文庫交響楽」,我が家の近くの書店にはまだ置いていないうえ,他の書店を回る時間もなく悔しい思いをしていましたが,たまたま出張先の広島大学生協売店で平積みにされているのを発見。いままでの青弓社の渋い文庫本シリーズに対して,明るく親しみやすい装丁で,いいじゃないですか^^。さっそく購入し,帰りの機内で読み始めました。ということで,まだ内容云々というほど読み込んでいないのですが,著者が実に丁寧にデータ(実際の文庫本もですが)を集め,分かりやすく整理していることに感心しました。私の知らない文庫本もたくさんあり(というより岩波文庫以外,知らないものばかりだったのですが),海外文学作品を文庫本で読もうとするとき,絶版文庫を渉猟せざるを得ない現在,本書は文庫本ファンにとって貴重なガイドになると思います。詳しくは,また….。

 

3月20日

昨夜,仕事帰りに,久しぶりに秋葉原へ行きましたが,3連休前とあって,雨にも関わらず,かなりの人で賑わっていました。神田,神保町は,古書の町というより,最近ではスポーツ店,楽器店の町になったせいもあり,”いかにも文学青年”というのは見かけなくなりましたが,秋葉原は相変わらず”いかにもパソコン青年”?が群をなしていて,なんとも心強い。わたしはあくまで傍観者だと思っているのですが,RedHat5.2を発売日当日に買い込み,電車の中でマニュアル(ちょっとひどい出来だが)を読みふける姿は,結構・・・にみられているかもしれません….^^;;。※このマニュアル,日本語化を急いだせいで,<<ここにフォント見本を貼り付ける>>とか<<適当な紹介文を入れる>>とか,あちこちに書いてある。ソフトは正式版でも,マニュアルはベータ版だったわけね^^。連休中にもかかわらず,あしたから,しばらく広島に出張してきます。

 

3月18~19日

きのうは引越準備のための手続きがいろいろあり,休暇をとっていました。さて,なんとなく手に取ったマルクス「哲学の貧困」。読んでみてわかったのは哲学が貧困なのではなくて,プルードンの経済学書「貧困の哲学」に対する批判書なんですね(いまさらわかったといのもなんですが…)。そういう体裁の本ですから,私のような門外漢でも,興味を持って読み進めることができました。マルクスはプルードンのあいまいな点を一つ一つ厳しく指摘し,その根拠として多くの経済学書を引用しているので,具体的なイメージが湧きやすくなっています。本書はマルクスのまとまった経済学書としては,最初のものだそうです。

 

3月17日

今月復刊された「利根川図志」は,江戸時代の一医師が利根川流域の様々な風物を描いたもので,文章自体は少し難しいものの,豊富な挿し絵を眺めているだけで楽しい本。お薦めです。ほかに「北越雪譜」や「日本風景論」など,岩波文庫の地誌関係本は興味深いものばかりですが,絶版と復刊を繰り返しているため,なかなか見つからないのが難ですね。

 

3月16日

さて,文庫本日記も細々とではありますが,ようやく丸一年を迎えることになりました(大げさかしら^^;;)。考えてみれば,生まれてこの方,一年も続けて日記を書いたというのは,初めてです。以前,PCVANに出入りしていたときにも,かなり書き込んでいたので,それをまとめてプリントアウトしてあるのですが,すでに十年近くたった書き込みは,とても懐かしく,また役に立っています。ともあれ,読書の対象は尽きないのですから,これからもできる限り続けていきたいと思います。こんごともよろしくお願いいたします。※さいきん,読書が捗っていないのは,満員電車の蒸し暑さのせいでもあります….。

 

3月12~15日

きょうから3日間,新橋駅前で恒例の「大古本まつり」が開かれます。今朝ほど通りがかったところ,すでに準備が始まっていましたが,夕刻から大雨との予報。大丈夫でしょうか….。

きのうは,半袖の人もかなり見かけるほどの暖かい一日でした。茅ヶ崎から辻堂まで海岸沿いをぶらぶらと散歩しているうちに,パシフィックホテル跡地に建ったリゾートマンションがモデルルームを公開していたので,見てきました(べつにマンションを買うわけではないのですが….)。高級リゾートということでしたので期待していましたが,造りはごく普通のマンションで,ただ海を一望できる環境はなかなかすばらしい。かつてのパシフィックホテルは,加山雄三らとともに湘南のシンボル的存在でしたから,これがなくなるときには結構惜しまれたのですが,またこういうひとつの綺麗な街ができると,それはそれで楽しみではあります。

 

3月11日

朝の電車に座って,さて昨日買った「週刊アスキー」を読もうか….と思ったところ,隣の男の人がおもむろに鞄から同じものを….。ああいうときは,「いやぁ,同じご趣味で^^;;」と言うわけにもいかないし,なんとなくばつが悪い感じがしますね。ついでに,アスキーから復刊?された「カオスだもんね」第1巻も買ってしまいました。しかし懐かしいね,EYE-COM。岩波文庫では,シラー「フィスコの叛乱」を読んでいます。

 

3月10日

Kayakさんから昼夜積読乱読文学リンク!に載せていただいたとの連絡をいただきました。さっそく訪問してみると,読書関係のリンク,とくに作家別のリンク集が充実していて,いろいろ楽しいページを見つけることができました。ということで,私のページのお薦めリンク集にも追加しました。

 

3月9日

妻に愛想を尽かされた男が,未練タラタラに愚痴り続けるような小説を読みたいと思うでしょうか? 近松秋江「別れたる妻に与える手紙」は,貧しい作家が,細々と本を売ったりして金を作り,馴染みの私娼との愛欲に溺れていく,そんな陰々滅々たる物語。しかし,これがなかなか読ませるのです。

岩波文庫版の解説は,かの宇野浩二が書いていて,「別れたる・・・」は,「泣き事とは知りながらも,妙な魅力に,引きつけられる・・・・実に不思議な,ある意味で無茶な小説」であるとし,「主人公は,独りよがりで,自分勝手である・・・秋江は,人と話をしていても,自分の話だけして,人の話を「ふむ,ふむ」と云いながら,少しも聞かない,というような人であった」と秋江自身の人柄にもふれています。一方,「秋江は情景を描くのにも,特殊の腕を持っていた。小説があまりに特殊すぎたために,損をしているところも,大へんあったように思う」とその表現力を高く評価してもいます。

ちなみに明治43年に出た初版は,伏せ字の多いものでしたが,戦後秋江の草稿などをもとに,復元が試みられ,岩波文庫版では,ほぼ原型に復されています。

 

3月6~8日

いやいや週末は暖かかったですね。家の近くの海浜公園に遊びに行ったのですが,早くもパンツ一枚でビショビショになって水遊びをしている子ども達がいました。この休み中に読んだ本は,Linux関係と,子どもの童話集。どちらもホントに理解するのには,難しい^^;;本でした。

昨夜はテレビで映画「DNA」をやっていました。この原作は,岩波文庫でも出ているウェルズ「モロー博士の島」ですね(別名「改造人間の島」)。ただし,人間を改造するのではなく,猿や牛を人間に改造するという….。

 

3月5日

めでたくハードディスクの増設に成功。合わせて18GBだ~。最初にNEC98を買ったときは,100MBを増設するのに,清水の舞台から飛び降りる気分でしたが….今回は飛び降りなくて済んだし。安くなったものですね。3年目を迎えたゲートウェイのパソコンも,だいぶ原型をとどめなくなってきました。BIOSもアップデートし,バリバリ行くぞ・・・・おっとっと,肝心な本を読んでいませんでした。すいません。

 

3月4日

新刊で後回しになってしまった「ザ・フェデラリスト」は,政治学の教科書ではなく,1787年に起草された連邦憲法案を巡って,連合か独立か,アメリカ各州の世論が二分されていた時期,連邦制の優位を説き,憲法案を承認させるべく,新聞紙上に若き日のハミルトン(のちに合衆国初代財務長官),ジェイ(イギリス講和条約交渉使節のメンバー),マディソン(のちに第四代大統領)が書き送った論説を集めたもの。まさに合衆国が生まれんとする瞬間。読み手にも高揚した気分が伝わってきます。これは勉強になりました。

 

3月3日

アリストテレスの「動物誌」をどうにか読み終えました….前半ちょっと退屈だったのですが,各動物の生態を論じた後半は,とてもわかりやすく,盛り返しました^^。解剖学的所見ばかりでなく,「羊飼いは,強い羊と弱い羊を判別するのに,冬になって霜をかぶっているものは強く,かぶっていないものはそうでない,といっている。なぜか?・・・病弱なものは体を動かして霜を振り落とすから」てなことも書いてあります。

アリストテレスの全著作中では,動物学書が1/5を占めるそうで,哲学的論文の理解のためには,彼の生物学を知ることが不可欠,とのこと。短い解説も,要領よくまとまっており,お薦めです。

 

3月2日

きょうの東京は,すっかり春の陽気。ポカポカのオフィスから眺める銀座方面の空も,やや霞んで見えます。増設用のハードディスクを買ったのですが,家に帰ると時間がなくて,作業できず残念。

近藤健児さんの「絶版文庫交響楽」がいよいよ出版間近とのこと。どんな話題が飛び出すか,楽しみですね。

 

3月1日

昨日は天気も良く,久しぶりに一日,江ノ島で遊んでいました。藤沢の我が家からは歩いていける距離なのですが,なかなか島内までは行かないのです。

高校入試対策のページで,こんな記述がありました。「文学史は知識ですから、ちょうど社会の歴史分野のように、主な作品・作者・時代などの記憶量によって出来・不出来が決まります。読んでもいない作品を暗記するのは空しいことですが、憶えるだけで答が出せるわけですから、考えようによっては国語の中では比較的得点しやすい部分であるともいえます。」 なかなかいいことを言ってますね^^;;。

そんなページを探したのも,岩波文庫の新刊「明治文学回想集(下)」中の,丸岡九華「硯友社の文学活動」を読んだからで,ここには紅葉や美妙らによる硯友社創立当時の思い出話が,詳しくかつ面白く語られています。硯友社や尾崎紅葉について,前期の受験ページで,「(紅葉は)明治時代の小説家。本名は尾崎徳太郎(おざき・とくたろう)。山田美妙(やまだ・びみょう)とともに硯友社(けんゆうしゃ)を創立し、雑誌「我楽多文庫(がらくたぶんこ)」を発行した。硯友社からは、泉鏡花(いずみ・きょうか)・徳田秋声(とくだ・しゅうせい)など明治時代の重要な作家が輩出している。「金色夜叉(こんじきやしゃ)」は、金がないためにフィアンセを奪われた主人公が高利貸しになって金の力で復讐するという内容で、「読売新聞」「新小説」に連載されてベストセラーになった作品。」とうまくまとめられていたのです。しかし,これらの作品に全くなじみのない中学生が,ここまでいちいち覚えるとなるとご苦労なことです。