盗まれた細菌/初めての飛行機

盗まれた細菌/初めての飛行機 (光文社古典新訳文庫)
ハーバート・ジョージ ウェルズ
光文社 (2010-07-08)
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光文社古典新訳文庫の新刊「盗まれた細菌/初めての飛行機」(H.G.ウェルズ)を読む。ウェルズといえば,宇宙戦争やタイム・マシンなど古典的な空想科学小説で有名だが,ほかにも結構変な小説を書いていて,岩波文庫所収の「トーノ・バンゲイ」は,一人の若者が「トーノ・バンゲイ」なるインチキ強精剤を発明。儲けに儲けて巨万の富を築くが,やがてそのインチキ性が暴露され,破滅と転落の道をたどるというもの。同じく「解放された世界」では,第二次大戦の核爆弾を予言し,科学知識の発達により独立主権国家,独立帝国はもはや存在不可能であるという予測をしていた。

ウェルズは,こういったSFや社会風刺とともに,ちょっとブラックな冗談小説も書いており,本書にはそんな作品が収められている。表題作は,無政府主義者が科学者のもとを訪れ,テロ目的でコレラ菌を盗み出したものの,逃げているあいだに試験管が割れてしまって…,初めて飛行機を操縦した本人は上機嫌だが,下界の人たちは大パニックに…,さてどうなるでしょうというお話し。当然時代がかってはいるが,ウェルズの別の一面が見られて面白い。