水の女

水の女 (講談社文芸文庫)
中上 健次
講談社
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講談社文芸文庫の新刊,中上健次の「水の女」。224ページ1260円というのは相当割高だが,集英社文庫版が手に入りにくくなっているので,これから読もうという方にはこれを勧めるしかない(電子文庫版なら400円で読める)。

中上健次には,「男」今風に言えば「漢」のイメージがついて回る。本短篇集も,アウトローな男たちと素性の知れない淫蕩な女と性的な関係が生々しく描かれていて,男性的な作品ではある。しかし,男と女の関係は一筋縄ではいかない。5篇の作品に現れる男も,女を支配する側からされる側へと次第に変化していく。「女って強いんよ」。女は男の心の隙間を狙って,しっかりとそこに住み着いてしまう。神代辰巳監督の映画でも有名な「赫髪」をはじめ,どの作品にも過激な性描写が続く。しかし,どろどろとした女との関係からは放出されるあてのないエロスの息苦しさを感じるばかりだ。