版元の社会思想社(創立昭和22年)は,戦時下,軍部ファシズムを批判したため東京帝国大学の教壇を追われ、戦後,リベラリストとして再評価された河合榮治郎の門下生によって設立された社会思想研究会出版部を前身とする。ベネディクト『菊と刀』やトインビーの『歴史の研究』などの翻訳出版権をGHQのオークションで取得,出版活動の基礎を築いた。現代教養文庫は昭和26年創刊。
当時は,角川文庫創刊など,第2次文庫ブームの時期であった。しかしその後,文庫創刊ラッシュによる競合の激化や,コンピュータゲーム機の登場によるゲームブックシリーズの陰りなどによって業績が下降し,出版不況のなかさらに厳しい運営を強いられるようになった。平成14年同社倒産により終刊。既刊約1800点。
社会・思想,科学史,文学紀行,美術,ミステリなどのほか,探偵小説,怪奇小説,幻想小説などに特徴があり,小栗虫太郎,香山 滋,橘 外男,久生十蘭,夢野久作,日影丈吉,山田風太郎の各「傑作選」は,類書が少なかっただけに便利かつ貴重であった。