触手責め「人間失格 壊」

人間失格 壊 (チャンピオンREDコミックス)
ニノ瀬 泰徳 太宰 治
秋田書店 (2010-07-20)

太宰治の「人間失格」。各社から文庫化されているが,今回は秋田書店。秋田書店で文芸物の文庫など出していたかしら….と思ったら,これが二ノ瀬泰徳の翻案による漫画化。

作品紹介によると,「幼い頃より自意識にまみれ,世の中と調和できずにいた大庭葉蔵。無邪気さを装って,周囲を欺いてきた彼の孤独な生涯とは…!? 不朽の名作を,漫画界の異端児が己の情念と人生を込めて大胆に漫画化!! 」とのこと。

二ノ瀬氏は,エロティックな触手責めを得意としているので,当然本作もその路線。「触手に関して「好きとかそういうレベルではないですね…触手に関する妄想は,5歳の頃からずっとしてました。他の事はともかく触手に関してだけはゆずれません」と言い,人間失格についても,「「壊」というサブタイトルには,文字通り「壊す」という意味の他に「改める」「怪しい」という意味も込めてます。・・・もっと敷居が高い,固い作品かと思っていましたが,現代にも通じる,ごく当たり前の世界を描いた話だと思いました。「恥の多い生涯を送って来ました」なんて,自分のことかと思ったくらいです。」(RED誌のインタビュー)

人間失格は数奇な男の生涯を描いているようで,多くの読み手に自分の中の触れられたくない部分をつかまれ引きずり出されるような気持ちの悪さを感じさせる作品だ。その意味で,二ノ瀬氏の触手というのもあながち奇をてらったものとは言えないかもしれぬ。

青空文庫「人間失格」