2003年7月

7月31日

なんとなく梅雨が明けぬまま,7月を越すというのもすっきりしませんが,週末からの夏空に期待しましょう。

 

7月30日

引き続き「夜明け前」の続き。『地方にあって,
若者らしい理想と地元の人々のために尽くさねばならない責任との間で揺れ動く主人公の姿を,
激動する幕末の世相を背景に描いた藤村畢生の大作』というまとめになるのだろう。しかし,読み続けていると,
ポイントを押さえて歴史の動きを巧く捉えているところにまず感心するものの,
主人公の心理的な葛藤が今ひとつリアルに感じられない。私自身が歳をとって,若いときの血気盛んな,
しかし青臭い気分にもう馴染めないせいかも知れないが・・・。とりあえず,先に進もう。

 

7月29日

「夜明け前」を読んでいます。結構丹念に読み進んで,第1部の前半がようやく終わるところ。ちなみに,
島崎藤村の作品は1993年12月31日で著作権が切れているので,「夜明け前」を始め,
主要な作品は青空文庫等で電子化が進んでいます。

 

7月28日

岩波文庫の新刊「夜明け前 第1部」(島崎藤村)を読んでいる。改版ものだが,
こういう作品を再び読む機会を与えてくれたことに,感謝すべきだろうか。しかし,学生時代,
初めて読んだときにも感じたとおり,ほかの(藤村を含む)明治期の文豪小説と違い,「夜明け前」
には近づきがたい雰囲気があり,なかなか手を出すのに勇気が必要だった。20年前は,
それほど精読したと思えない本書,新たな発見がありそうだ・・・。

 

7月25~27日

まだ梅雨明け宣言がなく,東北地方では地震が頻発。夏らしいスカッとした気分にはなかなかなれませんね。
集英社が文庫創刊25周年の記念企画として今年から刊行している「ヘリテージシリーズ」。そろそろ半年が過ぎて,
どんな具合か調べようと思ったが,神曲以外に何が出ているのか分からなかった。ユリシーズも文庫化するという話だったが・・
・。このままフェードアウトしてしまわないことを願う。

 

7月24日

「朝鮮民芸論集」をようやく読了。何で時間がかかったかというと,意外に面白く,じっくり読んでしまったから。
前半の解説部分も勉強になるが,後半の朝鮮各地の窯あとを訪ねる旅がよい。地名からあたりをつけ,古い窯あとを探しだし,
茶碗のかけらを掘り起こす。一日が終わると,同行の者とそのかけらを吟味し分け合う。学術調査というより,
マニアックな気分漂う発掘の旅。大正末期の朝鮮の地方の人々の生活も興味深い。

 

7月23日

まだ「朝鮮民芸論集」の途中。ラピタ8月号を読む。特集は,鉄道旅の完全ガイド。
各地の珍しい鉄道,マニアを紹介。私は鉄道の旅が大好きなので,なんとか飛行機や車ではなく,
鉄道を使ってやろうと画策するのだが,乗り放題状態だった学生時代と異なり,
なにかと時間に制約のある家族持ちの中年の身では,なかなか思い通りにならず,歯がゆい思いをしている。
我が家から近い面白い鉄道といえば,おなじみ人家を縫って走る江ノ島電鉄。これからの季節,
延々と続く海沿いの国道の渋滞を眺めながら,のんびりと揺られていくのは,なかなかよい気分で,
これぞ湘南の風物詩だと思っている。

 

7月22日

まだ鬱陶しい梅雨が続いています。平凡社新書「クラシックカメラ便利帖」(馬渕 勇)を読む。
マニアックな話ではなく,クラシックカメラの情報を整理したもので,主だったカメラのシャッターの形式や,
レンズの互換性など基本的なスペックを解説。作例などはほとんど無い。
AFカメラとの比較やデジタルカメラの今後など,著者の独断によるところも多いが,
シルバー向けに書いたというだけあって,分かりやすさはマル。

 

7月18~21日

夏休み最初の3連休。さっそく,越後湯沢の温泉に行って来ました。越後湯沢といえば,川端康成,雪国ですが,
爽やかな夏も良い感じ。幸い天気もまずまずで,何よりも東京から1時間半という近さが,子供連れには助かります。
あまり文学的な旅ではありませんでしたが,温泉は十分堪能しました。

前に揃えた荒木経惟写真集(双葉社)の崩壊が激しい。というのは,綴じが脆くて,
頁をめくるたびに1枚ずつ剥がれてしまう。バラバラにして飾って下さい・・・というわけでも無かろうに。
最近は相当分厚く高価な本でも,無線綴じですませているようですが,かつては岩波文庫も糸かがりだったですよね。

 

7月16~17日

なかなか梅雨が明けませんね。「ナジャ」を読了。随所に出てくる当時のパリの街角の写真が気分。今月の新刊,
「夜明け前」と「出家とその弟子」は改版だから後回しにして,「朝鮮民芸論集」(浅川 巧)を読む。
美術館のカタログみたいな体裁で,写真がたくさん入っているので楽しいが,文章の方は,
すんなりと理解出来るという感じではなく,なかなか骨が折れそうだ。

 

7月15日

1983年7月15日。何の日?と思ったら,20年前,任天堂の「ファミリーコンピュータ」
が発売された日だという。スーパーファミコンと合わせて1億1000万台を超えた国民的ゲーム機。
最近は小学生の標準機ゲームボーイアドバンスしか稼働していない我が家だが,ファミコン,
スーファミともに大切にとってある。いろいろと批判もあるけれど,この20年間,
子供の遊びを変えた影響力の大きさではダントツだろう。

岩波文庫の新刊「ナジャ」(ブルトン)を読んでいる。350頁のうち半分が訳注と解説・・・。編集部によると,
『これはブルトンにとっても特別な作品であったらしく,初版刊行から34年後に,表題に「著者による全面改訂版」
と付記した新版を発表しており,本書はその改訂版にもとづくものである。本書の訳者は,
33年振りに新たな訳を発表するにいたったわけだが,今回の「解説」原稿執筆中に,
ブルトンの大コレクションを含む遺品が競売にかけられるという知らせとコレクションのカタログが届くというハプニングがあり,
それまで以上に特別な作品となったことと思う。この本を手にとられた方にとっても特別な一冊となりますように。』 
「それまで以上に特別な作品」というからには,そのコレクション買うんだろうな,ていうのは余計なお世話だ。

 

7月14日

次号で終刊となる「カメラジャーナル」7月号を読みました。今回の特集?は,
田中長徳カメラ本全著書完全目録-48点に及ぶ田中長徳のカメラ本の書誌データ完全収録ということで,
面白かったのは,それぞれの本が重版や改版の際に判型や帯のデザインなど,
体裁が変わった点を細かく記しているところ。現役の作家の著作リストというのはよくありますが,
田中長徳氏のように,その本が何刷まででているとか,途中で版元が変わった事情とかは,「企業秘密」
に当たるのか,普通書いていませんね。ファンが知りたいのは,そこだと思うのですが・・・。

 

7月11~13日

今年は梅雨らしい梅雨で,なかなか明けませんね。生活人新書の新刊「デジカメ時代の写真術」
(森枝卓士)を読みました。『人に見せて恥ずかしくない,あげて喜ばれる写真はこう撮る!
 今日からあなたの写真がグンと垢抜けるコツが満載』とのことで,
相変わらず垢抜けない写真ばかり撮っている私としては,少し勉強しようかと。デジカメの良さは,
その場で失敗作の反省ができること。田中長徳氏は,
フィルムカメラは現像するまでみんな傑作を撮ったといい気分になっていられたのに,
デジカメではそれができなくなった,と言っています。確かに。

 

7月10日

カメラ,ということで,寺田寅彦氏の随筆「カメラをさげて」。
『このごろ時々写真機をさげて新東京風景断片の採集に出かける。・・・写真をとろうという気で町を歩いていると,
今までは少しも気のつかずにいたいろいろの現象や事実が急に目に立って見えて来る。つまり写真機を持って歩くのは,
生来持ち合わせている二つの目のほかに,もう一つ別な新しい目を持って歩くということになるのである。』
 レンズは第三の目,というのは,いまでもよく言われることだが,そんな目で覗いた東京の町は,
古きものと新しきものが一見無秩序に混在しているものの,
『こういうものに長い間慣らされて来たわれわれはもはやそれらから不調和とか矛盾とかを感ずる代わりに,
かえってその間に新しい一種の興趣らしいものを感じさせられるのであろう。・・・現代人にとって,
調和の美しさはもはや眠けを誘うだけである』と語っている。現代の東京でも,新しい高層ビルの谷間にあって感じるのは,
相変わらずの無秩序さ,不調和からくる,ある種の安心感なのである。

 

7月9日

新しいデジカメを買った。IXY400。いままで,
FinePix6800しか使ったことがなかったのだが,携帯性重視ということで決めた。考えてみれば,
キャノンのカメラ(デジカメをカメラと呼ぶのであれば)を使うのは,中学生の頃,父親の一眼レフを借りて以来,
ほとんど30年振りだ(この前,まだ使っていることを知ったけれど)。
ますます出番がなくなってきた銀塩の一眼レフとコンパクトカメラだが,これも捨てられずに持っている。
銀塩に比べれると,デジカメはどうも頼りないし,撮ったという実感に乏しいんですよね。

 

7月8日

鉄道模型というのは,男の子の永遠の憧れですな。我が家も,息子が小さいときには,
部屋が埋まるほどのプラレールを揃えていましたが,今となっては大変な場所ふさぎ・・・でも捨てられません。
まあ,もう少し資力と家の広さがあれば,小さくても良いから家の中に鉄道をひいてみたい,
という気持ちはあります。それなのに,家の中では飽きたらず,庭一面に鉄道をひき,「私鉄」
を開業してしまった人が。他ならぬ作家の森 博嗣さんで,その名も「欠伸軽便鉄道弁天ヶ丘線」。
この手作り鉄道の製作記が,中公新書ラクレの新刊「ミニチュア庭園鉄道 欠伸軽便鉄道弁天ヶ丘線の昼下がり」
にまとめられています。一読,羨ましい限り。1年かけて自分だけで土木工事をし,
最初のうちはときどき脱線騒ぎを起こしたけれど,最近はコーヒーを飲みながら運転出来るようになったそう。
お金のことは出ていないのだけれど,それを訊くのは野暮なんでしょうね。

 

7月4~7日

ぼやぼやしているうちに,7月の新刊が出てしまいそうです。今月は藤村の改版などがあるものの,アンドレ・
ブルトンの「ナジャ」(巌谷國士訳)が目新しいところ(白水社で以前読んだものですけれど・・・)。
シュルレアリスム運動の最盛期に発表され,不思議な女性ナジャとの出会いと愛と狂気を,
斬新な手法で描いたブルトンの代表作。「私とは誰か? ここでとくにひとつの諺を信じるなら,要するに私が誰と
「つきあっている」かを知りさえすればよい,ということになるはずではないか?」

 

7月2~3日

珍しく多忙につき,とくに意味はないのですが,岩波文庫の広告で勘弁して下さい。よく見ると面付けの説明もあります。

 

7月1日

カメラ付携帯電話記事撮影はお断り-『カメラ付き携帯電話で雑誌記事をチャッカリいただき,
という若者が増えているが,7月1日から始まった雑誌愛読月間で「マガ人は,マナーを守る」と,
タレントの吉岡美穂さんが書店店頭の読者マナー向上を呼びかけている。ひと昔前なら,
時刻表を隠れてメモするぐらいが関の山だったが,最近はカメラ付き携帯電話の普及で,
雑誌の立ち読み中気に入った料理レシピを堂々と撮影する読者が出現しているため,
読者のマナー向上を呼びかけることにしたもの。雑協ではこの呼びかけと並行して,携帯電話の事業者団体にも,
カタログなどを通じたマナー向上を働きかけることにしている。』 インターネットの普及によって,我々の周囲には,
タダの情報が氾濫しているので,情報の価値,コストに鈍感になってきたということは言えそうですね。しかし,マガ人・・・
というセンスにはなんとも・・・。