2004年1月

1月29~31日
来週末は結婚式があるので,床屋へ行ってきた。昔は,近所の行きつけの床屋だったのだが,今はもっぱらディスカウントチェーンの床屋で安くあげている。別にヒゲなど丁寧に剃ってくれなくてもよいし,時間ももったいないので・・・「浮世床」には「大道直して,髪結床必ず十字街にあるが中にも,浮世風呂に隣れる家は,浮世床と名を呼びて,軒稱て,連牆の梳髪舖」とあり,「諸人集まりて浮世の雑談をなす故に髪結床を浮世床と呼ぶ」というところから,床屋が風呂とともに庶民が集う場所であったことが伺える。私みたいな人が増えるようだと,日本の伝統文化である床屋談義というのは,なくなる運命にありそうだが,若い人が行くというヘアサロン?というのは,現代版浮世床といえるのかも知れない。ちなみに現在,東海・北陸地方より東では床屋,
近畿地方より西では散髪屋と呼ぶことが多いとのことです。

1月27~28日

嵐が丘(上) (岩波文庫)
嵐が丘(上) (岩波文庫)

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エミリー・ブロンテ
岩波書店
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めったに風邪などひかないのに,ここのところちょっと不調です。やはり,寝不足はいけませんな。2月は岩波文庫から「嵐が丘」が出ます。「嵐が丘」といえば,小学生の頃,苦労して読んだものの,なんだかわけが分からず,しばらく敬遠していましたが,大人になって再読したとき,ようやくその凄まじい怨念の力に引きずられて読み通し,感激したもの。以来,常に読み返すような本ではなかったので,来月の新刊は久々の嵐が丘体験となるでしょう。いまさらですが,作者のエミリ・ブロンテは,1818年北アイルランド生まれ。「ジェーン・エア」で知られるシャーロットは姉で,妹アンも「アグネス・グレイ」などで知られる女流作家です。幼い頃から戯れに物語を書き続けてきた姉妹ですが,1847年に揃って小説を発表。姉の「ジェーン・エア」は出版されるとベストセラーになったものの,いまでは世界5大小説の一つとまでいわれる「嵐が丘」はなかなか評価されず,エミリは出版の翌年に30歳で亡くなってしまいました。

1月26日

どばくちさいゆうき (角川文庫)
西原 理恵子 山崎 一夫
角川書店
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旧作だが,角川文庫「どばくちさいゆうき」(西原理恵子)を読む。サイバラと山崎一夫が,バカラ,麻雀,競馬,パチンコなどさまざまなギャンブルにチャレンジ。バブル華やかな頃のお話しなので,こんな景気のよい時代もあったんだなぁ・・・という感慨はある。各ギャンブルの簡単な遊び方レクチャー(あまり実用的ではないが)もあり親切?。白夜書房末井氏のキャラが相変わらず強烈で,最近のサイバラ本のようなパワーはないが,ギャンブルに嫌悪感を感じる諸兄でも楽しめる本。

1月23~25日
週末はワールドホビーフェアの開催されている幕張メッセへ。もちろん子供の付き合いで。とにかく人が多くて疲れた。ポケモンステージのおねえさんは良かったが。その間,「虚栄の市(3)」をようやく読み終わる。ベッキーとスタイン侯爵の関係が露見し,この先どうなる?という一番盛り上がったところ。勢いがついているうちに,続きを読みたいところだが。6巻本を取り出してくるか・・・。

1月21~22日
岩波文庫の新刊「虚栄の市(3)」(サッカリー)。第2巻はちょっとしんどかったが,今回はサクサク読み進む。ディケンズが当時の貧しい階級をもっぱら描いたのに対し,サッカリーは中流階級,というか上昇志向の強い庶民階級を描いて対照をなしているが,読み手も忍耐が要求されるディケンズに対し,サッカリーはゴシップネタ豊富で楽しめる。善人・悪人と一概に決められないのが本作の面白さで,善人タイプであるドビン少佐の煮えきらなさやアミーリアの自分勝手さにも次第に不愉快になってくる。

1月20日
岩波文庫の新刊「ボズのスケッチ 短篇小説篇(上)」を読む。当時新聞に記事を書いていた20代のディケンズによる短篇集。原題は,Sketches by ‘Boz’-Illustrative of Every-day Life, and Every-day People。ボズはディケンズのペンネームで,これが作家として世に出るきっかけとなった。先に出た(1986)岩波文庫「ディケンズ短篇集」の陰気で毒のある話に比べると,ユーモア重視の「世話物」なので,現代風の派手な展開の短編に慣れている読者は,辛抱できるかどうか。じっくり読めば,ディケンズらしいディテールの描写が楽しめますよ。

1月19日
週末は,今年初めての雪。子供は,雪玉が作れるほど積もらずガッカリしていましたが。えい文庫の新刊「往年のペンタックスカメラ図鑑」を読みました。趣味本を集めたこの文庫シリーズ,ライカ,ニコン,キヤノン,オリンパスに続き,本書は一眼レフカメラのパイオニアだった旭光学(現,ペンタックス)のかつての栄光の軌跡を辿ったもの。私自身は,ペンタックスのカメラは一度も所有したことがないので,国産初の一眼レフ,ペンタプリズム,クイックリターンミラーなど,ペンタックスの独創的なカメラ群を興味深く見ました。もちろん,35mmだけではなく,現行機の6×7や645,懐かしいAuto110なども詳しく紹介しています。

1月18日
国内発売が始まったParker100(万年筆)を入手。ダイヤモンドブルーという色。実物は綺麗だけれど,結構女性っぽい感じ。その割に,書き味はバランス良くしっかりしていて,インクの流れ(とりあえずウオッシャブルブルーを入れた)もスムーズなのは,Parkerらしいところ。パッケージの箱は分不相応に立派。高価な物ではないので,普段使いには良いと思われます。

1月16~17日
岩波書店によると,2003年度の岩波文庫一括重版は全書目が刊行中とのこと。売れ行きが悪かったのか?とも思いますが,未だ入手されていない方はぜひ。今月は,キケロ「老年について」の新訳が出ます。キケロ自身は,60歳以上まで生きた人のようですが。当時の「老年」というのが,どの位をさしているのか興味があります。日本では弥生時代など平均寿命は30歳程度だったようですが。私など,もうとっくに老人扱いでしょうか。ほかに,「対訳 シェイクスピア詩集」,「虚栄の市(3)」,「ボズのスケッチ 短篇小説篇(上)」(ディケンズ)が刊行されます。

1月14~15日
Sachi’s Booksurfingの海野さんのページからリンクしていただきました。ありがとうございます。綺麗な作りで,感心しました。レビューやリンクも充実しているので,お薦めします。紹介されていた「はてなアンテナ」のおとなりページには、吃驚。

1月13日
岩波文庫「春のリクエスト」出版題目(2月24日発売予定)

  • ○青帯
  • 福住正兄筆記/佐々井信太郎校訂 「二宮翁夜話」
  • 広瀬豊編 「吉田松陰書簡集」
  • 松浪信三郎訳 「パスカル 科学論文集」
  • スピノサ/畠中尚志訳 「神学政治論 ―聖書の批判と言論の自由―」全2冊
  • フッセル/池上鎌三訳 「純粋現象学及現象学的哲学考案」
  • カーライル/石田憲次訳 「衣服哲学」
  • ○白帯
  • ホブスン/矢内原忠雄訳 「帝国主義論」全2冊
  • ○黄帯
  • 永積安明校訂 「十訓抄」
  • 玉井幸助校訂 「東関紀行・海道記」
  • 伊藤松宇校訂 「風俗文選」
  • 伊藤松宇校訂 「蕪村七部集」
  • 本居宣長/村岡典嗣校訂 「玉くしげ・秘本玉くしげ」
  • 松平忠信/松平定光校訂 「宇下人言・修行録」
  • 仲田勝之助編校 「浮世絵類考」
  • ○緑帯
  • 二葉亭四迷訳 「あひゞき・片恋・奇遇 他一篇」
  • 伊良子清白 「詩集 孔雀船」
  • ○赤帯
  • 岩本裕訳 「インド古典説話集 カター・サリット・サーガラ」全4冊
  • バイロン/小川和夫訳 「マンフレット」
  • サッカレ/平井呈一訳 「床屋コックスの日記・馬丁粋語録」
  • シラー/相良守峯訳 「メッシーナの花嫁」 51年ぶりの復刊
  • ジョルジュ・サンド/川崎竹一訳 「彼女と彼」
  • フランシス・ジャム/三好達治訳 「散文詩 夜の歌」
  • チェーホフ/神西清訳 「シベリヤの旅 他3篇」
  • 湯浅芳子訳 「チェーホフ 妻への手紙」全2冊 44年ぶりの復刊
  • ゴーリキイ/湯浅芳子訳 「追憶」全2冊
  • サァディー/沢英三訳 「ゴレスターン」
  • 河野与一訳 「プルターク英雄伝」全12冊セット

1月12日
知恵の森文庫の新刊「スッチー道」(Keiko)を読む。見た目は際物っぽい本だが,元ANAのパーサーでイラストレーターの著者が,在職中の職場での人間関係や,オトコ事情などを具体的に描いており,なかなか楽しめる。この手の本,一般読者を意識してか,あまり妬まれるような話は書かないものが多いけれど,本書は比較的正直に書いているようで,航空関係者の世界はやっぱりうらやましいなぁと思う人が多いかも。同著者で,4コママンガ「無敵のスッチー」,「伝説のスッチー」(ソフトバンク)も出ている。

1月9~11日
年末に行けなかったので,近場ですが,3箇所ほどお墓参りに。「新宝島」より,残っていた「偉大なる夢」を読む。乱歩戦時中の作品であり,当時の社会情勢をよく反映しているため,今となっては一風変わった印象を与えるものとなっている。新型爆撃機を開発した日本人技術者とそれをねらう米国のスパイとの攻防を描いているが,当然ながら,米国はひどい扱いを受けている。アリバイ工作やトリック,意外なスパイ捜しという仕掛けもあり,興味を持って読めるものの,楽しんで読むためには,やはり時代が違うと言わざるを得ない。

1月8日
「新宝島」より「智恵の一太郎」を読む。戦時中に書かれた少年ものの連作短篇集。主人公は,智恵者の小学6年生,明石一太郎君。ちょっと生意気でいやなヤツかもしれないが,周りの友達や大人は,賢い子だと感嘆している。彼は,科学や自然のちょっとした謎を,優れた推理力や観察力で解き明かしていく。たとえば,蜘蛛はどうして離れた木の間に巣が張れるのか,トックリバチの巣作りの秘密,月の見た目の大きさはなぜ変わるのか?などなど。「子供の科学」に載っていそうな話ですが,いまの子供が読んでも興味は持てそう。

1月7日
光文社文庫江戸川乱歩全集の最新刊「新宝島」を購入。新宝島,智恵の一太郎,偉大なる夢という3作品を所収。「新宝島」は初めて読みました。海賊船に誘拐された3人の少年が,脱出した先の南方の小島で,サバイバル生活を送るという冒険譚。その未開の島で黄金に飾られた部族を発見した彼らは,少年ながら重用され,いつか日本の国のために,この黄金を役立てることを夢見る・・・。本書は戦前版を底本にしているので,作品全体に流れる大東亜共栄圏時代の臭いに馴染みにくいところもありますが,当時の少年ものの物語の雰囲気をよく伝えていて,興味深く読みました。戦後に出版された「新宝島」は,その辺の記述が,かなり改められているとのこと。

1月6日
「二十歳の原点」高野悦子さんの最期の詩の自筆原稿が,Web上にありました()。よく見ると,本になったものと若干の異同があります。この詩についてはかつて,高野さんの亡くなった後に編集されたものだという話もあったのですが・・・。

1月5日
ヒゲ剃り用のフォームをジェルに換えたら,なかなか快適に剃れるようになりました。ついでにシェーバーホルダーも換えて,シックのトリプルエッジに。特にヒゲが濃くない私の場合,3枚刃は小回りがきかない印象がありましたが,これは結構扱いやすく気に入りました。さて,「要約世界文学全集」の中に,1点だけ知らなかった作品があった。ポーの「ウィリアム・ウィルソン」・・・と思ったら,これは「影を殺した男」,アラン・ドロンが演じていたやつですな。つらつらと読んでいると,結構読み返したい作品がみつかりました。もっとも,書棚から探せるかどうかは別の問題ですが。

1月1~4日
あけましておめでとうございます。今年のお正月は,妻の実家へ行ったり,息子の友達一家が来たり,近所を通る箱根駅伝の応援などと,遠出せずに過ごしました。新しい年にふさわしい文庫本として,選んだのが「要約世界文学全集」(全2巻新潮文庫)。これはなかなかのアイデアで,普通の要約本のように,編者が適当に粗筋を書くというのではなく,原文からポイントとなる文章を抜き出して,ストーリーが分かるように編集している。ドストエフスキー,トルストイ,ツルゲーネフ,バルザック,ルソー,プルーストなど,62作品が各13頁で読め,普通のガイドブックを読むより,ずっと作品のイメージが掴みやすく「読んだ気」にさせ,満足感がある。名作本を読まない人のためにではなく,手当たり次第読み過ぎてこんがらがっている人の頭の整理のために有効。