3月27~31日
桜も満開となり,いよいよ春本番。岡山大学の生協書店には,岩波文庫の復刊が平積みされていたので,
古いものを再読してみようかとも思ったのですが,結局,初めから持ち歩いていた岩波文庫の新刊「日本近代文学評論選 昭和篇」を読むことに。
本巻には,芥川龍之介や谷崎潤一郎をはじめ,馴染みのある作家,評論家が多く,通勤読書でも楽しめます。収められているのは,
すでにいろいろなところで読んできた著名な論文が多いものの,改めて1冊にまとめられたのは便利。現在の作家は,
このような文学上の諸問題を議論する場を持っているのか,大いに疑問。それとも,書き手と読み手の双方に,
そのような問題意識自体が失われてしまったのだろうかとも思いました。
3月25~26日
「脂肪のかたまり」を行きの通勤電車で読了。ご承知の通り,プロシア占領下のルーアンから脱出する馬車には,
互いに見知らぬブルジョア夫婦3組,修道女2人,自由主義を標榜する男1人,そして娼婦1人が乗り込んでいた。彼らは,
娼婦が持ち込んだ食べ物のおかげで飢えをしのぐことが出来ると,普段は軽蔑している彼女に友好的な態度を見せる。しかし,途中の町で,
占領者であるドイツ人士官がその娼婦と関係が持てるまでは彼らの出発を許さないと言っているときくと,
愛国心ゆえ嫌がる娼婦をどうにかして説得し,士官の相手をさせようとする。再び出発の時,
皆のため泣く泣く相手をした娼婦を迎えた彼らの態度は,汚れた女を見るように冷たく,娼婦は悲嘆にくれる,というお話。
登場人物は漫画チックだが,一気に読ませるモーパッサンらしい巧みなストーリー展開は,出世作ながらこの短篇に十分現れている。
(来週は岡山に出張していますので,しばらくお待ちを)
3月23~24日
新橋大古書市での岩波文庫。結構量は出ていましたが,現行カバーの新しいものばかりで残念。遅くなりましたが,岩波文庫の新刊
「脂肪のかたまり」(モーパッサン)と「日本近代文学評論選昭和篇」を購入。「脂肪のかたまり」は久しぶり(旧版:1938年初版,
57年改訳)の新訳。階級意識,弱々しく偽善的なブルジョア,逞しい娼婦の悲しい定め,といった文句が思い浮かびますが,
さっそく再読してみます。
3月22日
月~木まで,新橋駅前広場で古書市開催中です・・・が,今日は大雨で休業状態。「嵐が丘(下)」を読了。
ヒースクリフって意外に純粋で男らしいじゃない,などと思いつつも,登場人物が,生まれてからずっと自分の領地の中で,
家族親族だけと顔をつきあわせて過ごしていることに,いまさらながら不思議な感じを受けます。これを書いてすぐ亡くなった著者のことを考え,
「(続)嵐が丘」があったらとか,ヒースクリフの独白物語として書けばとか,いろいろ想像は膨らみます。
3月19~21日
寒いですね。当地でもここ数日雪が降るかもしれないとのこと。そんななか,相模原にある大きな公園(アスレチック)
に行って遊んできました。最近は,子供同士の遊びでも,ゲーム系の室内遊びが多く,なかなかみんなで外で飛び回るということがありませんね。
せめて休日には自然に触れて・・・と思うのですが,わざわざ連れ出さなくてはならない親は,体が持ちません。引き続き「嵐が丘(下)」
を読んでいます。久しぶりの読み返しで,あらためて細かい描写に気が付く一方,気持ちの悪い存在だったヒースクリフは,
随分分かりやすいキャラクターだな,という印象に変わり,登場人物の子供時代に,より注目するようにもなりました。
ヒースクリフが出奔していたわずか数年の間に何があったのか? これは依然として謎のままですが。
3月18日
「虚栄の市(4)」を読了。まあ,アミーリアよりレベッカに魅力を感じるのは男の常でしょうが,
通読してストレス解消に役立つ本だとわかりました。こういう長編にしては,登場人物がこんがらがりにくいのも嬉しい。果たして,
この先再々読する機会がくるだろうか(たぶん次の岩波文庫改版の時だろうが)・・・などと考えてしまうのも歳とった証拠。
次は閉塞感で充ち満ちた「嵐が丘」。年度末で忙しいこの時期,ストレス倍増となるか,さっそく下巻を読み始めたいと思います。
3月15~17日
すっかり春めいてきましたね。コート無しでも,もう大丈夫。「嵐が丘(下)」とどちらを先に,と瞬時悩んでから,
大物に敬意を表して岩波文庫の新刊「虚栄の市(4)」を読みはじめました。ようやく最終巻。
ドビン少佐は相変わらずお人好しで何とも歯がゆいが,登場人物の高齢化が進んだ本巻では,あちこちでほろりとする場面もあり,
最後には必ずしも大団円・・・とはいかないことは分かっているのですが,とりあえず先を急ごうと思います。
3月11~14日
パソコンが絶不調で,久々の再インストール。それでも機嫌が悪く,いろいろダウンロードしながら,どうにか動くようになりました。
光文社文庫の新刊,江戸川乱歩全集「続・幻影城」を読む。古今東西の探偵小説をいろいろな観点から分類。変わったトリックを紹介したり,
代表的な作家を紹介したりなど,探偵小説初心者には楽しめる本。もっともこの分厚さの半分は索引ですが。
ずっと品切れで気になっていた新型CLIEを買ってしまった。久々のPalmですな。さっそく,ホットスポット(喫茶店)で接続を確認。
3月10日
東海林さだお氏の新刊「どぜうの丸かじり」(朝日新聞社)を読みました。丸かじりシリーズも,よくぞ続いて第21弾。
今回は庶民的食材が多く,ネギの野菜界における位置,どじょう丼,一人で生ビール,輸入弁当O‐bento,真夏のバーベキュー,
いろいろカレー粉をかけてみる,歯に挟まるニラの怨念,おじさんのスタバデビュー,五色納豆,疑惑の松茸土びん蒸し,温泉卵のゆるゆる,
旨いぞ豚しゃぶ,トンカツの刻みキャベツなどなど。相変わらず快調。私などショージ氏より一世代下だと思っているが,
非常に共感を覚えるのはなぜか。同じような話読んだことあるなー,と思っても,やっぱり電車の中で読みながらニヤニヤ。
オジサンのストレス解消にお薦め。
3月8~9日
チェーホフの「妻への手紙」は,予備知識なしに読むと,功成り名を遂げた老作家が,若い女優を妻にし,
ベタベタと甘言を書き送っている・・・という感じを受けますが,チェーホフは40そこそこで亡くなっているわけですから,
これは当たっていません。そういう印象を受けるのは,いかにもクラシックな!訳文によるところが大きく,
これがもっと現代的な流麗な訳文であったら,チェーホフのイメージは全然変わったものになるだろうと思われます。
3月4~7日
週末は仕事の傍ら,子供連れでポケモンセンターへ。入場制限で1時間半待ち。手持ちぶさたなので,ゲームボーイアドバンス
(ファミコンカラー)を衝動買いしそうになりました! 買ってしまったら3台目のアドバンスだから,危ない危ない。岩波文庫「嵐が丘(上)」
を読了。今回は,スッキリした訳のせいもあって,抵抗感なく読めてしまい,充実感は今ひとつ。(私が)
大人になって感情移入しにくくなっているのかもしれません。キャサリンにしてもヒースクリフにしても,
無理に造られたようで生き生きとした感じを受けないのですね。それでも,この限られた出演者,舞台装置のなかで,
代々続く愛憎物語を作り上げた作者の執念には感服します。それに続き,
ポケモンセンターの行列から抜け出して近くの丸善で買った岩波文庫復刊「妻への手紙」(チェーホフ)を読みはじめました。こちらは,晩年,
女優と結婚したチェーホフが,離ればなれの生活の中で書きためたもの。夫人の仕事柄,チェーホフの作品はもちろん,
当時のロシア演劇に関する話題が豊富で楽しめます。
3月2~3日
また,真冬に戻ったような寒さですね。「青空文庫」にここのところ堀辰雄が続けて掲載され,
現在23作品となっています。「美しい村」や「聖家族」,「風立ちぬ」,「菜穂子」など懐かしいものばかり。こういうものを読むと,
殺伐とした日々を忘れて,ゆったりとした気分になりますな。青空文庫の場合,横書きだと興ざめなので,なんとか綺麗に見えるよう,
毎回試行錯誤しながら組み直して印刷していますが,それも一つの楽しみと言えるかも。
3月1日
いよいよ,岩波文庫の新刊「嵐が丘(上)」を読み始めました。私にとって,最初から読み直すのは3回目,
20年ぶりということになりそうです。小学生のとき,世界文学全集のようなもので読み,このときは複雑な人間関係がハッキリせず,
あえなく討ち死にしました。読解力が無かったといえばそれまでですが,同じ頃に読んだ「ジェイン・エア」に感動したことを思うと,やはり
「嵐が丘」は手強かったといえそうです。そのため,敬して遠ざける気分が続いていましたが,20歳を過ぎた学生時代,岩波文庫の旧版で再読。
この時は荒涼とした風景と暗い情熱に満ちたヒースクリフに大変な魅力を感じ,一気に読み通しました。そんなわけで,私の中では,
古今の名作中,読み直しの「いよいよ」感ではトップクラスの本作。今回,自他共に認める中年男となった私は,
この作品の何に惹かれるのでしょうか。楽しみです。歳と共に,読み直しの機会を与えてくれた岩波文庫に,まずは感謝。