岩波アクティブ新書

【2002年1月創刊~2004年12月刊行停止】
岩波アクティブ新書は2002年1月に創刊された。1938年の岩波新書創刊以来,64年振りの新「新書」(ちなみに岩波文庫は1927年,岩波現代文庫は2000年創刊)であるから,その行方が注目されたが,丸3年となる2004年12月をもって,刊行停止となった。
当初,岩波書店ではアクティブ新書の誕生について,『この双書は,岩波新書・岩波ジュニア新書に続く新書シリーズで,「実用」を企画の軸にしています。直接役立ち,しかも信頼できる本物の情報を満載した実践的新書に,どうぞご期待ください。』といい,編集長も『これまで堅い本ばかり作ってきた岩波書店で,どんな編集者がこのような本を作っているのか,とお思いでしょうか。出身は岩波新書だったり,雑誌「世界」の編集部だったりとさまざまですが,どの編集者も一度はこのような本を作ってみたかった,と感じています。自分が個人的に好きなこと,自分の身のまわりにあることを企画に結びつけられるということで,みなはりきっています。そのアクティブな雰囲気が,本を通してきっとみなさんに伝わると思います』との意気込みを示していた。
そのラインナップを見ても,サブカル指向で,写真家の田中長徳氏をはじめ,オーディオやグルメなど,それまでの岩波新書の路線とは毛色の違うものが多く,なかなか面白いと思っていたのだが,若い人々にアピールするには,本の作りがお洒落とも言えず瀟洒とも言えず中途半端で,目に優しく読みやすい本文も,中高年向きという印象が拭えなかった。
『身近な人との関係を変えていくことによって,自分自身を変えるために役に立ち,なおかつ読んで楽しいHow to本』を目指していたアクティブ新書は,志半ばにして消えていく。最後に編集長は,自分たちの好きなものを,自分たちで支え,育てていこうとしたが,それが必ずしも多数派でなく目の前から消えてしまった….と語っているが,真に価値あるものであれば損得を顧みず長い事業として育てていくという岩波書店の風土の中で,なんとか存続の道を探って欲しかったものの,ファンとしては残念な結果となってしまった。