空中都市008….続

神田の三省堂で買ってきました「空中都市008 アオゾラ市のものがたり」。講談社青い鳥文庫版ですが。結構細かいところを覚えているなぁ・・・さっそく読んでみて,いろいろ懐かしいことを思い出し,少々涙目。
そもそも本書は,公害が大きな社会問題となっていた昭和40年初頭に着想されたものですから,アオゾラ市という副題にもあるように,科学の進歩により,クリーンで便利で,平和な世界がやってくるだろう….という前向きなお話なのです。だから,クルマも無公害の空飛ぶエア・カー。
小松氏は2003年を迎えて,『鉄腕アトム誕生の想定年,ライト兄弟飛行100周年でもあります。それほど,我々の年代にとっては,21世紀は先のことであり,未来の世界でした。「空中都市008」も21世紀の物語として書きました。想定した年代,仕掛けが現実に追いつかれ追い越されることは,SF作家の宿命ですが,それでも読者が一緒に成長しその魂を受け継いで次の世代に伝えてくれるならば,こんな嬉しいことはありません。』(小松左京マガジン第9巻)と自作について語っています。
はじめて月へ旅行したホシオ君やジニーちゃんは,月から見た地球の大きさに圧倒されます。「どうして,人間って苦労をして月なんかに住みたがるのかしら?」 月の開拓に関わってきた「晴れの海ホテル」の支配人は言います。「それは難しい問題ですね。その答えはまだ見つかっていないのかもしれません。あなたたちが見つけてくれませんか」
宇宙船から暗黒の宇宙にぽっかりと浮かぶ地球を眺めるとき,自然と崇高で荘厳な気分になるといいます。本書が書かれた翌年,アポロ11号は月面に着陸しました。当時,月から中継されたテレビの前に釘付けになっていた少年も,いまの失速気味の宇宙開発には,夢を見いだせずにいます。
時代とともに成長してきたはずの私たち。今から30年後,50年後の世界を,本書のように希望を持って想像することができるでしょうか? 次の世代に引き継がせたいものは何なのでしょうか?
やはり,涙もろくなるのは,やむを得ませんね。