日月両世界旅行記

00325061.jpg岩波文庫の新刊「日月両世界旅行記」を読む(やっぱり,今回もじつげつ….だった。前訳を踏襲したとのこと)。ジュール・ベルヌやH.G.ウェルズの先駆者たるシラノ・ド・ベルジュラックによる17世紀の空想科学小説。
「月の諸国諸帝国」と「太陽の諸国諸帝国」の2部構成である本書は,ガラス瓶を体に巻き付けた紳士がいきなりフランスからカナダへ飛んだかと思うと,バネ仕掛けで月まで行ってしまうし,とにかく荒唐無稽。
月には「地上の楽園」,太陽には「鳥の国」があり,地球とは思想も制度もすべてが異なるところで,主人公ディルコナは非道い扱いを受けながらも(2本足だから鳥の仲間だ,なんて),最後は「哲学者の国」へ旅立っていく。
当時の先端科学知識?を駆使し,過激に旧思想をなぎ倒していきつつ,背景には滑稽でロマンティックな雰囲気が漂い,思わずニンマリ。
岩波としては,1952年以来の新訳だが,平易で読みやすい訳と丁寧な注釈がついて,楽しめる本。