法隆寺金堂壁画 ガラス乾板から甦った白鳳の美

法隆寺金堂壁画――ガラス乾板から甦った白鳳の美
岩波書店
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法隆寺の金堂壁画は、奈良県斑鳩町の法隆寺金堂の壁面に描かれていた7世紀末頃の仏教絵画で、インド・アジャンター石窟群の壁画、敦煌莫高窟の壁画などとともに、アジアの古代仏教絵画を代表する作品の1つであったが、1949年の不審火による火災で焼損した。現在、記録として残されているのは、焼けた一部の壁画の残骸、焼失以前に行われた模写、1935年にガラス乾板を用いてモノクロ(一部カラー)で撮影された写真で、その一部は東京大学総合研究博物館などで見ることができる。

そのうち写真については、当時、国の依頼で全壁画の撮影と印刷を京都の美術印刷会社「便利堂」が担当し、380枚に及ぶガラス乾板はこれまで法隆寺で大切に保管されてきた。大部分はモノクロだが、一部は4色分解のカラー乾板もあり、今回、便利堂と岩波書店が共同で、デジタル印刷よりも実物に近い質感を得られるというコロタイプ印刷を用いて、焼損前の壁画の色彩や筆致を蘇らせた写真集が製作され、岩波書店より「法隆寺金堂壁画 ガラス乾板から甦った白鳳の美」(「法隆寺金堂壁画」刊行会編)として刊行された。

京都新聞の取材に対して、便利堂の山本修工房長は「撮影当時の色を客観的に再現することを心掛けた。職人としての思いを込めた」、法隆寺の古谷正覚執事長は「寺には再現壁画もあるが、焼損前の状態を知る貴重な資料となり、とてもうれしい」と話している。