「腕一本・巴里の横顔」….続き

fujitas.jpg講談社文芸文庫「腕一本・巴里の横顔」の後半は,未発表の草稿と日記を収録している。草稿は,藤田が生まれてから美術学校へ入るまでの思い出を随筆風に書いたもの。日記は,晩年のパリでの隠遁生活を記録しており,こちらは公表するためではなく私的なもの。
とくに,日記からは,病を得ながらも夫人と二人で静かに暮らす日々,戦前の華やかな生活と比べて,物寂しくも落ち着いた姿が伺え,感銘を受けた。
それは,夕べ見た夢や,時々の思いをぽつぽつと連ねているだけのものであるが,戦後戦争協力者として批判され,再びフランスへ渡って日本国籍を捨て彼の地に帰化してしまった藤田の真情が,私のような絵面を撫でてきただけの者にも惻々と感じられるからだと思う。読んでよかった。

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