梶山季之の「せどり男爵数奇譚」(ちくま文庫)に,本を人間の皮で装丁する話が出てきます。お話としては面白いけれど,実際そんな本が手元にあったら随分気持ちの悪いものでしょうし,戦時中の捕虜虐待などの関係でそういった類の噂は聞くものの,実際に目にすることは少ないと思います。
そんな中,藤田嗣治が人皮装の本を持っていたということはよく知られていて,庄司浅水「装丁の歴史」にも,藤田嗣治画伯旧蔵本として,その書影がでています。かなりゴワゴワシワシワといった感じになってしまっていますが,なんとなくほかの動物の皮とは違った感じには見えます。
本の中身とは別に,そこに封じ込められた怨念に参ってしまいそうです。