岩波文庫の新刊,ヴィットリーニ「シチリアでの会話」(鷲平京子訳)を読み始める。
Elio Vittorini (1908-1966)は イタリアの小説家,翻訳家でジャーナリスト。シチリアの鉄道員の息子として生まれ,17歳のときそこを去り,北イタリアで労働をした後,新聞社の校正係となり,その仕事の合間にアメリカ文学の翻訳や自らの短編小説を書き始めた。
長編小説「シチリアでの対話」は,若いときに故郷シチリアを出た主人公が,15年ぶりに夫を捨てて一人で暮らす母親の家へ向かうところから始まる。そのストーリーは,シチリアの貧しく厳しい生活を描いた,いわゆるリアリズムの作品と読める。
よって,なぜ1941年に著者が本書によりファシストに捕らえられ投獄されたかは,今となっては解説が必要で,本書にも巻末に訳者による100頁余りの手引きがつけられている。それにより,この物語の寓意性や当時の人々に与えたインパクトの大きさを知ることが出来る。(続く)