ちくま文庫の新刊「チリ交列伝 古新聞・古雑誌,そして古本」(伊藤昭久)を読む。
チリ交というのは,ちり紙交換のことだが,最近はまったく見かけなくなった。名古屋大学の武田先生のページに紙資源のリサイクルに関するその辺の事情が書かれており,なるほどと思うことも多いのだが,本書は,未だチリ交華やかなりしころの人物列伝。
チリ交の元締めであるタテバに集まるのは,いずれもワケありな人々。話を聞けば,全共闘くずれ,ギャンブルで身を滅ぼした商社マン,ミカン売りからの転身組など,前歴もさまざま。著者はタテバの所長から古書店主となった。チリ交は,貴重な古本の供給源なのである。
チリ交の内情は詳しいが,肝心な古本にまつわるエピソードが少ないのは物足りない。もっとも,これはあまり声高に言えるようなことではないのだろう。