キーツ詩集

キーツ詩集―対訳岩波文庫の新刊「キーツ詩集(対訳)」を読みました。
対訳詩集シリーズ「イギリス詩人選」としては,シェイクスピア,ジョン・ダン,ワーズワス,ブレイク,コウルリッジ,テニスンについで7冊目。岩波文庫には,ほかに「キーツ書簡集」(先頃復刊された)と「エンディミオン」があります。あとは冨山房百科文庫の「詩人の手紙」(田村栄之助訳)が目につくくらいで,意外に文庫化されていませんね。
キーツは若いときに両親を失い,15歳で医者の徒弟になるなど,厳しい環境にありながらもスペンサーやハントを読み,10代の頃より詩作を始めました。本書の冒頭にある「はじめてチャップマン訳のホーマーを披見して」には,17世紀初頭に書かれたチャップマン訳に感動したキーツの浪漫的な感覚が現れています。
その後,シェークスピアに親しみ,大作「エンディミオン」を発表するも,健康の悪化と経済的な困窮に苦しみ,25歳で早世。我が国では,蒲原有明や水上夕波など明治期の作家の訳により,早くから親しまれてきましたが,今回の岩波文庫版は,日本語訳がかなりクラシック且つ重厚な感じなので,あまり違和感なく読むことが出来ました。