江戸川乱歩「化人幻戯」(1)

江戸川乱歩全集 第17巻 化人幻戯光文社文庫江戸川乱歩全集の新刊「化人幻戯」を購入。さっそく,鉄塔の怪人,凶器,悪霊物語を読む。
少年向きの物語「鉄塔の怪人」は,怪人二十面相が少年たちを誘拐して,山中に人間カブトムシ王国を築くというヘンテコな物語。誘拐した少年を前に,二十面相がカブトムシの着ぐるみをかぶって,ちょこまかとカブトムシらしい動きを伝授する。これはかなり情けない。最後には鉄塔から墜落して,どう考えても二十面相一巻の終わり,という感じなのだが,その後「海底の魔術師」で何ごともなかったように復活してしまう。
「凶器」は,殺人事件に使われたと思われる先のとがった両刃の凶器が見つからない。窓の外には窓枠が落ちて粉々になったガラスが・・・室内には金魚鉢が・・・おなじみのアレですな。
「悪霊物語」は怪奇探偵リレー小説の発端編を乱歩が担当したもの。このあと角田喜久雄,山田風太郎が書き継いで完結した。妖しい人形師のもとを訪れた小説家に,裸体のモデルからそっと渡された手紙には・・・。リレー小説の中では比較的良くできていると言われているが,前の二人の持ちネタ明智小五郎と加賀美課長を登場させて頑張った山田風太郎の功績が大きいようだ。