コングリーヴ「世の習い」

世の習い岩波文庫の新刊「世の習い」(コングリーヴ,笹山隆訳)を読みました。
ウィルアム・コングリーヴは1700年頃イギリスで活躍した劇作家。当時のイギリスは,王政が復活し,フランスへ亡命中にフランス演劇に親しんだ貴族たちにより,演劇も復活。女優が出現し,現在のような屋内型劇場もあらわれるなど,中世以来の伝統的な演劇が大きく変わった時期。「世の習い」は,その王政復古期の喜劇の中でもっともよく知られているもので,社交界での男女の恋の駆け引き,結婚や財産を巡るトラブルを面白おかしく描いています。
一読し,本作の歴史的な意義を抜きにして,初演以来300年を経た日本の読者に「風習喜劇」の面白さが味わえるかというと,かなり難しいのではないかとの印象。もちろん,ところどころには機知に富んだ会話のやりとり,イギリス流のユーモアにニヤリとすることはあるのですが,退屈であることは否めませんでした。
本書には戦前の福原麟太郎による「世間道」,1992年角倉康夫による「世のならわし」という先訳があり,笹山氏によるといずれも疑問点多く「遺憾」とのことですが,私としては福原麟太郎の超訳?を読んでみたいですね。