NHK生活人新書の新刊「旧字力,旧仮名力」(青木逸平)を読む。
ここのところ岩波文庫もすっかり新字に切り替わってしまい,旧字に接する機会が希になってしまった。本書の著者は,私と同世代の編集者。ということは,旧字・旧仮名には縁のない学校生活を送ったはずで,本好きであったとしても,旧字・旧仮名については,本を読む上ではあまり抵抗無く読める,せいぜい,雰囲気があって嬉しいかなぁといったところが普通のセンスであろう。
しかし,表記にこだわる著者は本書で,「旧字力」と題し,なぜ旧字と新字があるのか?,新字のなくしたもの,旧字の問題点,人名用漢字が生みだした新字と旧字,書き換え字について,新字体のようなウソ字の氾濫-拡張新字体,平成16年の人名用漢字追加について,など旧字というより新字の抱える問題を中心に,わかりやすく解説。これまで何となく旧字に接していた人も,そういう仕組みだったのか,とあらためて参考になるところが多い。
第2章では,同様に「旧仮名力」として,旧仮名遣いと新仮名遣いの違いを解説。著者曰く『旧字旧仮名は手書きでのアプローチをお勧めします。漢字の字源を体得し,旧仮名遣いはあなたの文体を豊かなものにするでしょう。そして,新字新仮名が断ち切った,過去の日本語と文化との絆をよみがえらせてくれるはずです。』