心変わり(ミシェル・ビュトール)

心変わり
今月の岩波文庫はヘヴィーなものが多く,なかなか捗っていませんが,まず「心変わり」(ミシェル・ビュトール)を読みました。
この小説,「きみは・・・」という二人称で書かれています。「きみ」というのは,もちろん主人公であって読者ではないのですが,パリの妻子とローマの不倫相手のあいだで揺れる45歳中年男の心情は,まったく異なる時代,世界に生きる同年代の中年男(私のこと)にも意外と共感するところがありました。
時間が頻繁に前後するストーリーは,閉塞感や倦怠感に覆われており,決して楽しいお話ではありません。それが日々の生活に漠然とした不安を感じている中年男には響くのでしょう。少々辛い本ですね。