岩波文庫の新刊「アメリカ紀行」下巻(ディケンズ)を読む。
ディケンズはアメリカ滞在中にフォースター宛に沢山の手紙を書いており,「アメリカ紀行」はそれを参考にしながら書かれた。本書に付録として載っているフォースター「ディケンズ伝」には実際のディケンズの手紙がたくさん引用されているが,それを読むと,「アメリカ紀行」に書かれたものより,もっと素直な意見があって面白い。
ディケンズは単なる物見遊山ではなく,当時の新興国アメリカの福祉や教育,奴隷制度などに広く目を向けており,英国と比較して進取の精神を賞賛すると共に,アメリカ人のとくに「上流」の人々の粗野な面については厳しく非難している。
当時のアメリカでは自国の作家が育っていなかったため,もっぱらイギリスの文芸作品が読まれていた。それについて,アメリカでは未だ著作権が認められていなかったから,勝手に出版,改作などが行われており,ディケンズはこの際国際著作権の必要性を主張したが,そのため彼の地のマスコミから叩かれたとのこと。