1997年12月,創業75周年を迎えた小学館より新たに「小学館文庫」が登場した。シンボルマークは肥桶を担いだ男….ではなく,甲骨文字を図案化した,右手に知識,左手に勇気を掲げた男である。
収録書目のジャンル分けは,文芸・学芸作品(赤),自然・アウトドア(緑),実用・ライフスタイル(黄)のシグナルカラー3色による。ケイブンシャあたりで見たような背表紙だが,タイトルはハッキリしていて読みやすく,書店の棚でも探しやすいだろう。
発刊以来1ヶ月が過ぎて,最初の35冊中,増刷されたものが,西村雅彦「僕のこと,好きですか」,野田知佑「カヌー犬・ガク」,ドラえもんルーム「ド・ラ・カルト」など9冊。ちょっと見たところ,やはり文庫オリジナルや書き下ろしが売れているようである。
実際の本の造りは,扉や,カバーを外したときの表紙など,やや安普請の感じはするが,本文用紙は岩波文庫に対して赤みがかった色で,手に持った感じも軽い。なんと,アタマも綺麗に揃っている。
価格は,とくに書き下ろしや文庫オリジナルものは,比較的抑えられていて,他社に比べて割安な印象。「ライカ通の本」など,ビジュアル重視の書目でも220頁で460円とちょっと買いたくなる値段である。岩波は同じくらいのページ数で600円はするから….。
ただ,分類番号(Y-つ-1-1など)が,カバーの背以外,本体のどこにも書かれていないのはいかがなものか。将来,古書店などでカバーなしの小学館文庫を整理するとき,頼りになるものがない。まあ,岩波文庫のように,リストを作りながら系統的に読んでいくような人は,出てきそうにない,ということか。
また,奥付に価格が記載されていないのも姑息な感じがしてイヤ,と思ったら,岩波文庫も最近,書いていない。いつから価格は書誌的事項じゃなくなったのだろう。
ちなみに,「この種の本なら岩波文庫,というブランド・イメージは悪いことではない。小学館文庫とは考え方が違うので,全体としてはぶつからないでしょう。本の選択の可能性が広がるのは結構なことで,住み分けしてやっていきたいですね」と岩波文庫の塩尻親雄編集部課長は言っている。
小学館のホームページは,http://www.shogakukan.co.jp/。