画家が絵画の技法書,書家が習字のお手本,演奏家が楽器奏法の本を出すのは当たり前。ところが,小説術,作文術に限っては,功なり名を遂げた文豪でなければ許されない雰囲気がある。谷崎潤一郎,川端康成,三島由紀夫,丸谷才一・・・。ちょっと気の利いた文章などオレでも書ける,という意識がそうさせているのだろう。
これら文章術を読み,各々の作家の文体や着想の秘密を探るのも面白いが,自らエッセイや評論を書こうという人に,実践的な文章術を指南しているのが,小学館文庫の新刊「リンボウ先生の文章術教室」(林 望)。ここでのリンボウ先生は,文豪ではなく国語教師。
文章の客観性,品格,ユーモア,悪口など,まっとうな文章を書く上でポイントとなる点を挙げて,カルチャースクールや大学での生徒の作品添削の実例を示しながら,よい文章とは何かを示している。生徒の文章を拙いと言うのは簡単だが,添削結果を見ると,毎日ブログを更新しているような人にも参考となる点が多々あるかと思う。
2002年に単行本で出たときは「文章術の千本ノック」。これは売れなかったそうで,今回文庫化に当たってわかりやすいタイトルに変えている。