自暴自伝(村上"ポンタ"秀一)

自暴自伝――ポンタの一九七二→二〇〇三マーラーといえば,ヴィスコンティの映画「ベニスに死す」での交響曲第5番が有名だが,私が好きなのは,やはり映画「仮面のアリア」で使われていた第4番のアダージョ。雨がしとしとと降り,若いオペラ歌手同士が愛を確かめ合う場面・・・。心に染みますな。
湿っぽい空気の中,音楽を聴きながら昨日読んだ文春文庫の新刊「自暴自伝」は,ドラマー村上”ポンタ”秀一の自伝(元本は2003年刊)。
ポンタは,1951年生まれ。セッションドラマーとして,沢田研二,泉谷しげる,山下達郎をはじめ,アイドル歌手や演歌歌手まで,多くのアーティストのレコーディングに参加したほか,自身のバンドPONTA BOXを結成し,海外でも活躍。
本書はドラマーとしてのデビューから現在に至る30年間の思い出話をまとめたもので,おなじみの歌手やグループの裏話もたくさんあり面白いのだが,JAZZのひとらしく,事実なのだろうが,ちょっと眉唾ものに思えてしまうところも多い。聞き書きなので,編集でマイルドにまとめてはいるものの,この饒舌に馴染めない人もいるだろう。
楽器を知っている人には日本を代表するミュージシャンでスーパースターなのだが,知らない人には裏方の一人ということで,このギャップは大きい。本書を面白く読めるのは,楽器少年か,あるいは競演したミュージシャン達と同時代を生きてきたオジサン世代か。