なんだかバタバタしているうちに,もう7月。映画ポセイドンを見てきたせいで,またタイタニックも見たくなり,DVDを引っ張り出したりしているうちに休日も終わってしまった。
岩波文庫の新刊「小説の方法」(伊藤整)は面白いのだが,通勤電車でベルティーニの美しいマーラーを聴きながら読んでいると,ついウトウトと眠ってしまい,なかなか捗らなかった。
詩人であり小説家であり翻訳家(「チャタレイ夫人の恋人」裁判でもおなじみ)でもある伊藤整は,日本と西洋の小説の違いを「仮面紳士」と「逃亡奴隷」という言葉で説明している(本書の付録に所収)。
「仮面紳士」というのは,たとえば英国紳士のように表面は紳士的だが,中にどろどろとした欲望を秘めているもので,これが西洋の小説の姿。一方,日本の小説は,一般社会からはみ出して文壇に逃げ込んだ「逃亡奴隷」のような,自主性のない私小説。
伊藤整の理論は,かなり強引だが,説得力がある。以前,これも岩波文庫で出た「変容」を読んだときには,若者(当時の私)には難しい作品だ,と思ったが,もう一度読み直してみようかしら。