詩本草(柏木如亭)

「詩本草」(柏木如亭)を読みました。
若くして幕府の棟梁となった如亭は,吉原で遊びまくった末,各地へ遊行の旅に出ることとなりますが,旧友の葛西因是が「色食は性と成り天真爛漫」と評したとおり,そこでも風流な遊び人として名を馳せ,女性関係も盛んだったよう。
グルメな本書にも,吉原時代の思い出や女性と食べ物を絡めた詩がいろいろ出てきます。たとえば,魚の塩漬けの段で,越前の鱈は美貌の妻,越後の鮭は色っぽい妾,加賀の姫鰯は俊敏な下女,駿河の興津鯛は名高い遊女,若狭の小鯛は金持ちのお嬢さん,といった具合。
また,あるときは風雨激しく富士山の山小屋に死ぬ思いで3日間閉じ込められ,その間白粥しか食べられなかったので,いまでも白粥を見ると吐き気がするなどという件もあります。
漢文なので取っつきにくいのですが,語句の注は丁寧,一章ごとに要点と背景がまとめられているので,味わって読むには適当かと思います。