酒道楽(村井弦斎)

酒道楽岩波文庫の新刊「酒道楽」を読む。正月休みに相応しい酒飲みによる蘊蓄話・・・を期待した向きには残念。本書は,明治期の禁酒(あるいは嫌酒)小説なのだ。
明治期の新聞小説界の第一人者村井弦斎は,報知新聞紙上で「百道楽」シリーズと銘打ち,釣道楽,酒道楽,女道楽,食道楽を発表。本書は大酒のみの教師二人が西洋志向の妻や酒嫌いの周囲の人間からさんざんな目に遭わせられる啓蒙小説。啓蒙とはいうものの,堅苦しくないドタバタ娯楽滑稽もの。当時はアメリカの禁酒法時代で,弦斎もそれに影響を受けたらしい。
酒も煙草もやめられない小生にとって何か役に立つかと言われると,お説ごもっともであるが遠慮させていただきます,といったところ。それでも,明治30年代の酒を巡る雰囲気,世相がよく出ていて十分楽しめた。