エイ文庫の新刊「安原製作所 回顧録」(安原 伸)を読んだ。
安原製作所といわれても,興味のない人からすれば,町工場の創業者の自伝かいな・・・といったところだろうし,製品名が「安原一式」だときけば,なにやら戦前の軍需工場の趣さえある。
実際の安原一式とは,1998年に発表された著者考案によるレンジファインダーのフィルムカメラ(ライカみたいなやつ)で,当時カメラファンの間で大きな反響を巻き起こしたもの。京セラでコンタックスの開発に携わっていた安原氏が一念発起し,自らのブランドカメラを作るべく,中国の生産工場と契約し,いつ生産が始まるかもわからないうちからWebによる予約販売を開始。予約金が必要にもかかわらず,一ヶ月で3000台を受注することとなる。
本書は,「安原一式」から2004年の二号機「秋月」完成までの安原製作所の短い歴史を回顧しながら,20世紀末のカメラ事情,カメラメーカーとは何か,フィルムカメラの最期など,広くカメラ業界全体の問題に多くのページを割いている。当時の騒動を知らない人でも興味深く読めるだろう。
ちなみに安原氏は1964年生まれ。意外に若い。