岩波文庫の新刊「ぷえるとりこ日記」(有吉佐和子)を読む。
1960年頃、アメリカに留学した著者の体験を元にし、アメリカの名門女子大生グループが、社会調査のため、プエルトリコを訪れた際のさまざまな人間模様を描く。
物語は、リーダー格のアメリカ人女子大生ジュリアと日本からの留学生崎子が交互に手記を書く形で進む。貧しくアメリカの属国扱いだったプエルトリコに嫌悪の目を向け、日本人やドイツ人に対する差別意識も伺えるジュリアと、アメリカの傲慢さに辟易し、プエルトリコの民衆の置かれた苦しい立場に、ようやく戦争から立ち直りつつある日本を重ね合わせ、同情を示す崎子。お互い理解しがたい存在と思いつつも、遠慮無く意見をぶつけ合う。
本書は社会派小説でありつつ、50年前のエリートを自認するアメリカの女子大生の生活や考えを、男女関係を絡めながら、あるときには皮肉っぽく、あるときにはユーモアを交えて子細に描いた青春小説でもあり、飽きさせない。